秋の夜長にじっくり浸み込ませる「牛すじ豆腐」【今夜のラガーのおとも。#9】
2019.11.14
発売から130年、多くの人に愛されてきた「キリンラガービール」。このビールをよりおいしく愉しむために、料理研究家の瀬尾 幸子さんと“最良のおとも”を考えていく連載企画。 思わずのどが鳴り今夜にでもつくりたくなる、それでいてシンプルで家庭的な“普段着のおつまみ”を、瀬尾さんならではの視点からご紹介します。
秋の味覚をテーマにお届けしたシリーズの最後は、できあがりまでの時間を愉しむ「牛すじ豆腐」です。
プロフィール
瀬尾 幸子
料理研究家。「どこででも手に入る食材でつくる、食べてくたびれない簡単でおいしい家庭料理」を提案している。得意なメニューは「ちゃっちゃとつくってホッとできる家ごはん」や、「なんだか飲みたくなる、おつまみにもおかずにもなる一品」。『ラクうまごはんのコツ』(新星出版社)『かけごはん100』『のっけごはん100』(主婦と生活社)など著書多数。
秋の終わりに“煮込み料理”が恋しくなる理由
寒くなってくると、とろ火でじっくりと味を浸み込ませた煮込み料理が好まれるようになります。コトコト煮る音を聞いたり、ほこほこ昇る湯気を見ているだけでも、体が温まってきませんか?こうして完成までの時間を愉しむのも料理の醍醐味です。
そこで、今回はじっくり煮込んだ「牛すじ豆腐」を紹介します。この料理にもラガービールがよく合います。ラガーのいいところは守備範囲の広さ。私はキンキンに冷やしたものでなく、ちょっとだけ常温に近づけて、グラスに移して味わっています。牛すじのコクに負けない旨味が楽しめますよ。
「牛すじ豆腐」の味の決め手は「煮汁」
まずは「牛すじ」の仕込みから。鍋で煮込めば2時間ほどかかりますが、圧力鍋なら15分程度で仕上がります。
牛すじを煮るときに茹でこぼしをするレシピもありますが、今回はこぼさずそのまま使ってみてください。牛すじの煮汁は、旨味がぎゅっと詰まった良質な「だし汁」です。このだし汁こそが、おいしい「牛すじ豆腐」になるために最も大切な材料。
しっかり煮たら冷まして、だし汁と一緒に冷蔵庫で一晩寝かしましょう。
余分な脂が表面に浮いた状態で固まるので、スプーンですくって取りのぞきます。この脂も捨てずに別の炒め物などに使用してみてください。野菜だけのシンプルな炒め物も、牛の風味が加わって驚くほどおいしくいただけますよ。
私の「牛すじ豆腐」はだし汁をベースに、砂糖1:醤油2の割合で煮込んでいきます。みりんやお酒、もちろん鰹や昆布も必要ありません。
ここに長ネギを入れると、風味がぐっと良くなります。牛の香りをもっと和らげたい場合は、ショウガやニンニクを足してあげるといいでしょう。
鍋に材料と調味料を入れたら、お水をひたひたに入れて煮ていきます。沸騰するまでは強火で。お鍋の中心までぐつぐつしてきたら沸騰した証拠。ここからは弱火にし、あとは火加減を変えず、じっくりコトコト煮ていきます。煮物は混ぜない、かき回さないが鉄則。何もせず、煮詰めていくだけなので、手間がかかりません。
自分好みの味に煮詰めていく
では、どこまで煮詰めたらいいのでしょう?それを知る手がかりが「味見」です。煮物の味見は「煮汁」でする。具材は冷める段階で味がしみていくものですから、途中で味見をしてもまだ中まで浸みていません。
飲んでちょうどいいと思うくらいだとまだ薄い。少ししょっぱいなと感じるくらいまで煮詰めたほうが、ちょうどいい仕上がりになります。
味が薄いなと感じたらもっと煮詰めればいいし、濃ければ逆に水を足す。ここさえ押さえておけば、どんな煮物だって大丈夫!ちなみに今回の「牛すじ豆腐」は、煮汁が鍋底から2〜3センチまで煮詰まるくらいを目安にしてみてください。
調味料をシンプルにすればするだけ、同じバランスのまま味が濃くなっていきます。単純明快。調味料をシンプルにする方が自分好みの味の調整もしやすくなりますよ。
牛すじを使うなんて難しい…と思われたかもしれませんが、とっても簡単でしょう?鍋を火にかけコトコト時間をかけて煮込んでいる間にもう一、二品、野菜を使った料理なんかを用意しておくことだってできます。
秋の夜長。台所での料理の時間も楽しみながら、おいしいビールとともに過ごしてみてはいかがでしょう?
牛すじ豆腐
〈材料〉
- 牛すじ:300g
- 木綿豆腐:1丁
- 長ネギ:1本
- 醤油:大さじ3〜4
- 砂糖:大さじ1.5〜2
〈作り方〉
@牛すじにひたひたの水を入れ、圧力鍋で15分煮込んでいく。
※ 一度にたくさん煮ておいて、使う分以外は煮汁ごと冷凍庫で保存しましょう。
A鍋に醤油大さじ3〜4、砂糖大さじ1.5〜2、斜め切りにしたネギ、木綿豆腐とともに@を入れ、ひたひたに水を入れて強火にかける。
B沸騰してきたら弱火にしてじっくり煮込んでいく。
※ 煮詰めたいため落としぶたは不要です。
C味見をしながら、ちょうどいい甘辛さに仕上がったら完成。
※ 少ししょっぱいと感じるくらいの方が冷めた後しっかり味が浸み込みます。