ワインと食事が“合う”ってどういう感覚?ゼロからはじめるワインの愉しみ方!
2019.08.22
「ワインってなんだか難しそうだし、種類が多くて何を選んでいいのかわからない」
そんな漠然としたイメージで、ワインを敬遠している人は意外と多いのではないでしょうか?
確かにワインは、産地やブドウの品種、製法など、とても細かい分類がなされており、数え切れないほどの種類が存在します。食事との組み合わせも多種多様で、その複雑さゆえに近寄りがたく感じてしまう人がいるのもよくわかります。
「知識があるとワインの愉しみ方が広がるのは事実です。でも、ワインというのは決して堅苦しいものではなく、もっと自由で、楽しいお酒です」と話すのは、DRINXでワインを担当する丹尾健二と伊藤佳奈子。
共にソムリエの資格を持っており、日常的にワインを飲んでいるという丹尾と伊藤ですが、やはり最初は愉しみ方がわからなかったといいます。
そんな2人に、初心者にオススメする5種類のワインを選出してもらい、いつも家で作っている料理と共に“ワインに合う”という感覚の正体や、初心者でも失敗しないワインの選び方、創造性に溢れるワインの愉しみ方などについて聞きました。
プロフィール
丹尾健二
DRINXのワイン・ウイスキー担当。
一般社団法人日本ソムリエ協会認定ソムリエ。キリンビールに入社後、営業やリサーチ業務を経てDRINXに。お酒は何でもマルチに楽しむが、最近のお気に入りはシェリー。釣りとボードゲームを愛する草食系。
伊藤佳奈子
DRINXのワイン・ウイスキー担当。
一般社団法人日本ソムリエ協会認定ソムリエ。キリンビールに入社後、ビールやワインなどの酒類の営業や企画、メルシャンのデジタルマーケティングを担当したのちDRINXの担当に。「ワイン、ウイスキーをもっと楽しく」をモットーに商品企画やコンテンツ施策を担う。
ワイン選びのポイントは料理との“共通点”にあり!
─ワインって、レストランでオススメしてもらって飲むと美味しいなと思うんですけど、家で飲むものを選ぼうとすると、種類がたくさんあるし、知識もないので尻込みしてしまうことがあって…。何か初心者にもわかりやすいワイン選びのコツってありますか?
丹尾:そうですよね。僕もワインを飲みはじめた頃は、よくわからないなと思っていました(笑)。だけど、食事に合うワイン選びって、そんなに難しくないんですよ。一番簡単なのは、ワインと食べ物との“共通点”を見つけるという選び方です。
─共通点、ですか。例えば、どんなものがあるのでしょう?
伊藤:一番わかりやすいのは“色”ですね。すごくざっくり言うと、濃い色の料理には赤ワイン、薄い色の料理には白ワインが合います。
─そうなんですか!
丹尾:よく、肉には赤ワイン、魚には白ワインって言われるじゃないですか。でも、実際には鶏肉のクリームソースに合う白ワインもありますし、鰻の蒲焼に合う赤ワインもあります。
─それは初めて知りました。いきなり、目から鱗です(笑)。
伊藤:色以外だと、“土地”という共通点も参考になると思います。その土地でとれた食材には、その土地のワインが合うんです。
丹尾:ワインの味わいを決めるのって、やはりブドウなんですよね。ブドウは涼しいところで育つと酸がのってきて、暖かい場所だと果実味が豊かになります。
だから、涼しい土地で作られたワインは酸味のある爽やかな味わいになりやすくて、暖かい土地のワインはフルーティーで、リッチな味わいになりやすいという傾向があります。
例えば、果実味のあるスペインのワインは、味がしっかりしたスペイン料理と合うんです。
伊藤:日本のワインは、繊細で、穏やかな味わいのものが多いんですけど、それってやっぱり和食と合うんですよね。だから、その土地のワインと、その土地の食材や料理は相性がいいというのを覚えておくと失敗はないと思います。
丹尾:あとは、“味わい”の共通点を探すという選び方もありますね。
例えば、柑橘系の味付けがされている料理にはフレッシュな酸味のワインが合いますし、醤油が使われているものには日本のワインが合います。
伊藤:今日、用意した料理とワインでいえば、野菜スティックにつけるネギ味噌はピリ辛なので、スパイシーなフルボディの赤ワイン『ボルサオ』が合いそうです。
ネギが強くてハーバルな味わいのネギ味噌だったら、華やかで果実味のあるロゼ『カノン・デュ・マレシャル ロゼ』をオススメします。
─コッテリした料理にはサッパリしたワインというように、ギャップのある味わいの方が相性的にいいのかなと思っていたんですけど、ワインは味わいの共通点がある料理と合うお酒なんですね。
“ワインに合う”の正体とは?
─とても初歩的な質問で恐縮なのですが、ワインと食事が“合う”というのを、具体的に説明するとどのような感覚なのでしょう?
丹尾:これは言葉にするのが難しいんですけど、簡単に言うと「食べ物とワインのバランスが合っている」ということです。
─それは舌が肥えていなくても感じられるものですか?
丹尾:味の感じ方というのは個人差がありますが、相性のよさはわかると思いますよ。
今日、用意した食事とワインだったら、どの組み合わせがわかりやすいかな?
伊藤:私は、キムチとごま油がかかった豆腐と『笛吹甲州 グリ・ド・グリ』の組み合わせが美味しかったですね。是非、食べてみてください。
─なんというか“丁度いい”ですね。どちらの味が勝つわけでもなく、ちゃんと両方の特徴が引き立ち、口の中で感じられるというか。
伊藤:そうなんですよ。“合う”というのは、まさに“丁度いい”という感覚なんです!
丹尾:確かに、この組み合わせはよく合うなぁ。すごく美味しい!
伊藤:キムチが強く出てくるかと思っていたら、後からごま油がグッと出てきますよね。これはいい組み合わせを発見しました(笑)。
─よく見たらごま油と『笛吹甲州 グリ・ド・グリ』って色が似てますね。それに、どっちも日本産だ!
丹尾:そうですね。それに、このワインはオイリーさも感じるから、ごま油との相性がいいんだと思います。
─色、土地、それに味わいまで!先ほどのお話にあった共通点が3つとも一致した組み合わせなんですね。理論を実際に体験したら、“ワインに合う”という感覚がすごく腑に落ちました。
伊藤:ワインって、産地やブドウ品種、つくり手、製法など、非常に分岐が多いので、味わいの違いが大きいんですよね。だから、好奇心や探究心がくすぐられるし、そこが魅力だなと思っています。
─こうやって、料理の要素を分析しながら、相性のいいワインを探すという飲み方は面白いですね。一口一口に発見があって、楽しいです。
丹尾:そうなんですよ。だから、いろいろと試したくなっちゃうんですよね(笑)。これに食材の旬も入ってくると、組み合わせは、ほぼ無限にあるので。
ソムリエが選ぶ初心者にもオススメのワイン
─今日は、「初心者にもオススメのワイン」というテーマで、5種類のワインを用意していただいました。それぞれの特徴を教えてください。
伊藤:ひとつ目は、『バルセロナ 1872』というスパークリングワインです。ワインに苦手意識があっても、スパークリングは好きという方って多いんですよね。バルセロナ 1872はとにかく飲みやすくて、どんな料理とも相性のいい1本です。
それと、ラベルが可愛いのでお土産にも喜んでもらえると思います。ボトルやラベルの見た目というのも、ワインの愉しみ方を広げてくれる大切な要素なので。
丹尾:『バルセロナ 1872』は、“Cava(カバ)”と呼ばれる種類のスパークリングワインなんです。スパークリングワインといえば、フランスのシャンパーニュ地方で作られているシャンパンが有名ですが、カバはシャンパンと同じ製法で作られています。
ブドウの品種は違うんですが、味はシャンパンに匹敵するくらい美味しくて、価格もお手頃なので、試しやすいワインだと思います。
丹尾:2本目は『カノン・デュ・マレシャル』のロゼです。ロゼって、日本だとあまり種類がないんですけど、フランスでは赤ワインや白ワインと同じくらい親しまれています。
これはマグナムボトルといって、一般的なワインボトルの倍のサイズ(1500ml)なので、みんなでワイワイ飲むにはぴったりだと思います!
伊藤:マグナムボトルは、テーブルに置いておくだけでもテンション上がりますよね(笑)。
ロゼって甘いという印象を持たれがちなんですけど、フランスでは辛口のものが多いんです。『カノン・デュ・マレシャル』も辛口のロゼなので、食事にもしっかり合います。
伊藤:『ボルサオ』はスペイン産の赤ワインです。「赤ワインは渋味が苦手」という方がいると思いますが、『ボルサオ』は果実味が強く、渋さが少ないのが特徴です。
フルーティーでジューシーな味わいなので、普段あまりワインを飲まない方にも美味しく飲んでもらえると思います。我が家では、ネギ味噌を使った野菜スティックと合わせるのが定番です!
丹尾:『ボルサオ』には、スペインの固有品種であるガルナッチャ(グルナッシュ)というブドウがメインに使われているんですけど、他にも数種類のブドウをブレンドすることでバランスのよい味わいに仕上げられています。
料理と合わせやすいのはもちろん、飲む人を選ばないワインなので、みんなでお酒を飲むようなシーンでは活躍してくれるはずです。
丹尾:『玉諸甲州きいろ香』と『笛吹甲州グリ・ド・グリ』は、どちらも甲州という日本固有品種のブドウで作られています。それでいて色も味わいも違うので、そういう多様性を楽しんでもらいたいという想いで選びました。
『玉諸甲州きいろ香』は、グレープフルーツやユズ・カボスなどの和柑橘を思わせるフレッシュな酸味が特徴で、さっぱりと飲みやすいワインです。『笛吹甲州グリ・ド・グリ』は、バラのような香りとふくよかな味わいが特徴で、ブドウの果皮や種に由来する特徴的な色合いからオレンジワインと呼ばれています。
伊藤:この2本は、飲み比べてみると、ワインの多様性や奥深さが感じられると思います。
『玉諸甲州きいろ香』は、その名の通り香りから愉しめるワインです。さっぱりした味わいなので、軽くレモンを絞ったオイルサーディンやオリーブオイルをかけた冷奴と合うと思います。『笛吹甲州グリ・ド・グリ』は、さっぱりとこってりの間くらいの味わいだと個人的には感じていて、ごま油との相性は抜群でしたね!
創造性に溢れるワインの愉しみ方
取材中、「この味なら、こっちのワインが合うかも!」「少し調味料を変えてみたら、ワインの味がグッと引き立ったね」など、2人が次々に料理とワインの組み合わせを試している様子は、まるで新しい美味しさを探し求める研究所のようでした。
その中には常に新しい発見があり、試行錯誤があり、ワインは創造性のある愉しみなのだということがよくわかりました。
種類の多さや組み合わせの複雑さといったワインの難しさは、自分好みの美味しさを見つけるといったワインの面白さと表裏一体なのかもしれません。
知識や経験を重ねることによって、理解度が上がっていくというのはワインに限った話ではありません。そして、理解度が上がれば楽しさの幅が広がっていくというのも、あらゆることに共通する感覚ではないでしょうか。
今回ご紹介した“色”、“土地”、“味わい”という選び方のポイントを参考に、自由で奥深いワインの世界を愉しんでみてください!