バニラアイスから中トロまで。幅広く愉しめるウイスキーのペアリング [Blend Your Curiosity vol.9]

2019.08.01

「Blend Your Curiosity」は、マスターブレンダーである田中城太が、ブレンダーの仕事を通して発見したウイスキーの新しい愉しみ方をお届けする全11回の連載企画です。第9回目となる今回は、ウイスキーの「ペアリング」について。SNS上で人気の愉しみ方から田中がおすすめするペアリングまで。 幅広く自由に愉しめるウイスキーのペアリングについて掘り下げていきます。

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自由に愉しめるウイスキーのペアリング

「ウイスキーにはどんな料理が合いますか?」ここ最近、このご質問をいただくことが本当に増えました。正直申し上げて、この質問をいただくたびにどう応えたらいいか迷ってしまいます。

結論から言ってしまうと、ウイスキーのペアリングは自由に組み合せてその相性を愉しめればいいと思っています。その理由のひとつは、ウイスキーは他のお酒と比べて幅広く料理に合わせやすいからです。

唐揚げとハイボールの相性が良いことは皆さんご存知と思いますが、ウイスキーは発酵食品を使った料理との相性も良く、チーズに限らず麹や味噌、醤油などを使った日本の伝統的な料理と全般的に合います。
また、お酒の種類によっては合わせるのが難しいとされる、魚介類の刺身や焼きものとの組み合わせも相性がとても良く、ウイスキーは食中酒として広く楽しめるお酒で、これも隠れた魅力のひとつなのです。

最近話題になりましたが、バニラアイスのウイスキーがけなど、今まであまり話題にならなかったウイスキーとスイーツのペアリングも知られるようになってきました。実は、和菓子・洋菓子を問わず、スイーツとも相性が良いことも、ウイスキーの特長です。

このように、ウイスキーと相性の良い食べ物はたくさんありますが、もちろんそこには理由があります。そこで今回は、ウイスキーと食べ物のペアリングについて、相性の良い食べ物とその理由、私が愉しんでいるペアリングについてご紹介したいと思います。

ウイスキーが幅広くペアリングを愉しめる理由

魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワインといったように、料理とのペアリングと言えばワインを思い浮かべる方が多いと思います。私もワインと料理のペアリングを通して、お酒と料理のペアリングの楽しい世界へ引き込まれました。ワインと料理の相性がピタッと合った場合には、その相乗効果で「マリアージュ」と呼ばれるように感動するような味わいを堪能することができます。その一方で、ワインには酸やタンニンが多く含まれているが故に、合う料理、合わない料理がはっきりと分かれます。

反面、ウイスキーのペアリングが唐揚げや発酵食品、そして魚介類の刺身や焼きものから和洋菓子のスイーツまで、多様な食べ物との相性が良い理由には以下のようなことが挙げられます。

1) アルコール度数が高く、その度数を調整して、好みの濃度で合わせられる
2) アルコールによる、脂肪を溶かしたり、洗い流す効果によって食材の風味が引き立つ
3) 蒸留酒としての特性上、酸や鉄分がないため、料理の味とケンカしない
4) 樽由来成分のタンニンが適度にあり、タンパク質を多く含む料理と合う
5) 樽熟成由来の複雑で芳醇な香味が、発酵食品の滋味深さと非常に相性が良い

唐揚げとハイボールの組み合わせが良いとされるのは、ウイスキー中のアルコールによる脂の洗い流し効果と炭酸のリフレッシュ効果によって、揚げ物の脂っぽさを和らげてくれるだけでなく、ウイスキーのアルコールが脂を溶かし、鶏肉のうまみを引き立たせてくれるからです。

ウイスキーが魚介類とおしなべて相性が良いのは、魚の生臭さを感じさせずに素材本来の味が活きるからです。ワインに含まれる鉄分は、時として魚の成分と反応して生臭さが出てしまうのですが、ウイスキーにはその鉄分がないだけでなく、料理によっては魚介類の風味を抑えてしまう酸もないので、魚介類のおいしさを引き立たせてくれます。

しばしばウイスキーとチョコレートのペアリングは「鉄板」と言われます。これはチョコレートの油脂がアルコールと溶け合うと共に、糖の甘さがアルコールの刺激を和らげ、カカオの風味と樽熟香の成分が似た者同士でお互いを高め、味わい深くしてくれるためです。

また、話題のバニラアイスとウイスキーの組み合わせは、ミルクの乳脂肪がウイスキーのアルコールと口の中でうまく調和して溶け合うと共に、バニラビーンズ由来の香味と樽熟成由来の香味に共通の成分が多いために、相乗効果で驚きの美味しさが生まれるのです。

このように、ウイスキーは揚げ物から魚料理、スイーツまで幅広くペアリングを愉しめる「万能な食中酒」なのです。

自分の好みに合ったペアリングを見つけられるのもウイスキーの愉しみ

私自身、これまでいろいろな料理とのペアリングを試してきました。そんな中で特に「お!」とうなった組み合わせは「マグロの中トロ」と「筑前煮」です。

マグロの中トロは、濃いめの水割りと合わせてみてください。ほんの少しわさび醤油を付けた中トロを口に運び、濃いめの水割りを味わうと、脂ののった濃厚なおいしさと共に脂が心地よく溶けて、マグロのうま味がじわっと広がります。このペアリングを発見したのは小料理屋さんでしたが、あまりの美味しさにお店の周りのお客さんたちに「ぜひ試して!」とすすめてしまいました(笑)。

筑前煮は、自宅でウイスキーを片手に手料理をあれこれ愉しんでいた時に発見したのですが、日本の伝統的な家庭料理との相性の良さを実感した瞬間でもありました。ぜひ根菜類のたっぷり入った筑前煮を、お好みのウイスキーの飲み方で試してみてください。ごぼうやニンジン、昆布などのうまみが口の中一杯にひろがり、ペアリングの愉しさを感じられることでしょう。

本当はまだまだおすすめの組み合わせがあるのですが、ぜひ皆さん自身で、先述したポイントを思い浮かべながら、好きなお料理とウイスキーの相性を試してみてください。ウイスキーのタイプと飲み方によって相性は違ってきますが、きっと新たな驚きや発見があると思います。

さて、これまでウイスキーづくりを取り巻く環境から、つくる工程、実際のウイスキーの愉しみ方まで幅広くお伝えしてきました。この連載も残すところあと2回。次回は、ウイスキーづくりに関わる人たちや、ウイスキーを愛してくれる人たちとの交流についてお届けします。私がこれまでに出会ってきた人たちとのエピソードや、ウイスキーの世界を支える人たちの想いなどをお伝えできればと思います。

お楽しみに。

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