スパイスとワインで楽しむ世界の味!スパイス料理とワインのマリアージュ
2019.05.30
日本人の食卓にも随分身近になったワインですが、「自分の好みに合うワインを選ぶのは難しい」という声をよく聞きます。特に家でワインを楽しむ場合は、ワインを選ぶと同時にそのワインに合う献立も考えなくてはいけないとなると、気後れしてしまうという方も多いと思います。
そんな悩みを解決すべく、今回はスパイス&ハーブマスターの遠藤由美さん(エスビー食品株式会社)をお招きし、メルシャン輸入ワイン担当の瀧川がスパイス料理×ワインの極意を伺ってきました。料理を手がけるのは世界を旅し、各国の料理を味わってきた料理家の口尾麻美さん。手軽に本格的なスパイス料理が作れると評判のSPICE&HERBシーズニングを使った料理を作っていただき、スパイスとワインのマリアージュを体験しながらの対談です。
プロフィール
遠藤由美
エスビー食品株式会社 広報ユニット所属。スパイスとハーブのもつ世界の楽しさを広める「スパイス&ハーブマスター」の社内資格を取得。メニュー提案のほか、取材対応、セミナーやイベントでの講師活動などスパイスやハーブの魅力を紹介する活動を行っている。
プロフィール
口尾麻美
料理家・フォトエッセイスト。世界を旅して、それぞれの国の家庭料理を学んだり、ストリートフードを食べたり。そこからインスピレーションを受けた料理を本、雑誌、料理教室などで提案。著書に『トルコのパンと粉ものとスープ』(誠文堂新光社)など。
プロフィール
瀧川佳奈
ソムリエの資格を持ち、主にフランス、スペインのブランドのブランドマネージャー。ブランドに関わる商品開発や海外パートナーとのやり取り、国内のマーケティング企画立案など、多岐に渡る仕事に取り組む。
気軽に世界を旅した気分になれるシーズニング
瀧川佳奈(以下瀧川):今日はありがとうございます。SPICE&HERBシーズニングは私もよくスーパーで見かけます。種類も豊富でいつも気になっていたのですが、まずはどういった商品なのか、コンセプトも合わせて教えていただけますか?
遠藤由美(以下遠藤):「レストランで食べるような料理を家庭でも再現したい」というご要望に応えて開発したシーズニングミックスです。必要な食材は2~3種で、あとは簡単に混ぜたり煮込んだりするだけでできあがるもの、というコンセプトとなっています。
たくさんシリーズが増えていく中で、エリアごとに旅行した気分になれるように、『旅するシーズニング』としてのご提案もしております。例えば「ビストロツアーズ」はフランスなどヨーロッパの料理、「ダイナーツアーズ」はアメリカや中南米の料理、「アジアンツアーズ」はアジアの料理というように、このシーニズングを使うことで世界各国の料理を簡単に再現できるようになっています。他のシリーズも合わせるとメニュー提案型シーズニングだけで現在100種を超えるシーズニングがあります。
瀧川:そんなにたくさんの種類があるのですね。ワインも世界中で造られていますから、いろいろな組み合わせが楽しめそうですね。
食材の色とワインの色を合わせる
遠藤:ワインのプロである瀧川さんは、料理とワインを合わせる場合、どのように選びますか?
瀧川:一番簡単な合わせ方は「色」を合わせる方法ですね
遠藤:食材の色とワインの色を合わせるということですか?
瀧川:そうですね。ロゼワインならエビやサーモン、トマトなど似た色の食材を使った料理が合うと思います。白ワインには野菜料理や白身魚の料理、赤ワインならお肉が合うというのも同じセオリーです。「国や産地を合わせる」というセオリーもあります。
遠藤:国や産地を合わせるのは、わかりやすいですね。その土地で造られたワインと、その土地の料理に使われてきたスパイス。同じ風土で育まれたもの同士、合わないはずはないと思います。
瀧川:スパイスやハーブもワインと同じでヴァリエーションが豊富なので、詳しくない人にとってはハードルが高い食材だと思うのですが、どのように料理に取り入れたら良いでしょうか?
遠藤:まず、スパイスとハーブとは何か?という点ですが、私はいつも「香りがあって人の暮らしに役立つ植物」とお伝えしています。
スパイスとハーブを日本語に訳すと「香辛料」と書くので、なんとなくスパイスは辛いものというイメージがあると思うのですが、香りという大きな役割の中にごく一部色付けと辛味があるのです。実際、スパイスの大半は辛くないんですよ。香りを料理にのせていくのがスパイスとハーブの役目です。スパイスによっては、食材や料理の臭みや油っこさを打ち消す場合もありますが、それも香りをのせることでの効果。
「味」というと、おいしい味、まずい味、いろんな味があると思うのですが、風味というと「おいしい」という概念ですよね。風味は「風」という字を書く通り、香りは風にのって感じるものですから、風味を決める要素は香りなんです。スパイスとハーブはお料理をおいしくするために香りをのせるものだと思います。ワインも香りは非常に重要ですよね。
瀧川:スパイスって全体的に辛いものというイメージがありました。ワインと同じで、香りを楽しむものなのですね。
簡単に作れる本格スパイス料理と楽しむマリアージュ
遠藤:1皿目はアンチョビポテトですね。単品で食べるとアンチョビの味が全面に出てくるのですが、ワインと一緒に食べるとガーリックをより感じるようになりました。鼻に抜ける香りが違ってきます。面白いですね。
瀧川:このワインは南フランスのアンチョビの産地で造られているワインです。同じ土地で作られた食べ物とお酒は気候、土壌が同じだから自然と合うんですよね。飲んでいただくとわかると思いますが、香りが本当に素晴らしくて。オレンジマーマレードのような甘い華やかな香りや白い花の香り、紅茶の風味もあります。香りだけでも楽しめるワインです。
一緒に味わってみると、あとからガーリックのニュアンスが出てきますね。ワインとスパイスのマリアージュの鍵は香りなのですね!
遠藤:ワインと食事のマリアージュの素晴らしさは、それぞれ単体で楽しむよりも、その何倍もの相乗効果を得られることだと思います。香りはもちろん味わいも、口に含む前と後でその違いに驚かされることがありますね。
瀧川:自分で本格的にスパイスを使った料理を作るとなかなか味が決まらない…ということがあります。特に本場の味を食べたことがないための、完成の味がわからないということが多いのですが、このシーズニングはレシピ通りに作ると必ず味が決まるのが嬉しいですね。
遠藤:シーズニングシリーズは、海外旅行をしてきた若い方たちが現地で食べた料理を再現したいけど作り方がわからない、そんな要望に応える意味合いもありましたが、実際には年配の方も結構買ってくださっています。献立を決めるのが面倒だったり、孫にどんな料理を作ったらよいかわからない、といった方が多いようです。パエリアを作るとなると気構えてしまいますが、シーズニングを使えば、材料を炊飯器に入れて炊くだけで作ることができます。
瀧川:炊飯器で作れるのは便利ですね。ホームパーティなどにもよさそう!
今回、パエリアに合わせるためにご用意したのは、ピノ・ノワールとシャルドネをブレンドしたスペイン産のロゼスパークリングワイン「アナ・デ・コドーニュ・ロゼ」です。シャルドネのふくよかさとピノ・ノワールに由来する赤い果実の香りが華やかな印象です。エビやサフランによく合うと思います。
遠藤:ワイン単体で飲むと蜂蜜のようなニュアンスがありますが、魚介といただくと後味がすっきりしますね。
瀧川:サフランは香りがとても華やかですよね。地中海沿岸はロゼワインの産地なのですが、サフランの産地でもあり、サフランを使ったブイヤーベースなどのお料理も有名です。産地が近いという意味でもサフランとロゼは相性が良いのだと思います。
遠藤:あまりワインと合わせるイメージのないタイ料理「きゅうりのソムタム」に合わせるのはどんなワインですか?斬新なデザインのボトルですね。
瀧川:そうなんです。スペインをイメージしたワインなので、名前も「バルセロナ1872」と言います。スペインの生産者と一緒に日本人の食卓に合うものをと、共同開発した日本限定の商品です。みんなで食事をするときにテーブルを華やかにしてくれる、そして見てすぐにスペインとわかってもらえるようなパッケージを心がけました。
遠藤:ピリっと辛いソムタムを単体でたべるより、このスパークリングワインと合わせると爽やかな香りが強くなったような気がします。
瀧川:スペインのスパークリングワイン「カバ」はシャンパーニュと同じ製法で造られているので、通常のスパークリングワインよりも泡がしっかり長持ちして、かつ、きめ細かいのでそのように感じられるのだと思います。一般的にカバはドライな味わいのワインなのですが、これはシャルドネが入っているので、味わいのふくよかさが口の中の辛味を和らげてくれるのかもしれませんね。
ワインもスパイスも「地の恵み」
遠藤:次のメニューは、BBQソース風のスペアリブです。オールスパイスとガラムマサラの絶妙な風味がしっかり効いています。アメリカ大陸から中南米でよく食べられるメニューです。あの辺りの地域にはお肉をよく食べる文化があり、豪快なバーベキュー料理は定番です。
瀧川:豪快なお肉料理ですね。こちらも国合わせのセオリーから、同じアルゼンチン産のスパイシーな風味の赤ワイン「トラピチェ ブロッケル マルベック」をご用意しました。
遠藤:味と風味がしっかりしているスペアリブにはしっくりきますね。とても飲みやすく、食も進みます。
「スパイシーな風味の赤ワイン」とのことですが、一般的には「スパイシー=辛い」と理解している人が多いですよね。実は私たちにとって「スパイシー」とは「香りがある」ということなんです。
瀧川:そう言われてみると、ワインの味わいも「スパイシー」で表現することがありますが、ピリリと辛いという意味ではないですね。
遠藤:スパイスやハーブについてよくご質問をいただくのが「スパイスやハーブをたくさん入れれば、料理はおいしくなるのですか?」という点です。
スパイスやハーブの一番の役割は“香り”です。スパイスに旨味はないので、いくら入れても香りは入るけれど旨味は入らない。料理は旨味も大事ですから、スパイスを使って本格的にカレーを作る場合も、トマトや玉ねぎ、にんにくなどを入れていただかないとおいしくはならないですね。もちろん塩味もご自身で調整していただく必要があります。
瀧川:このシーズニングには味のベースとなる塩や砂糖、調味料も入っているので、簡単に作れますね。ワインの時間をゆっくり楽しめそうです。
瀧川:最後はタコスですね。スパインのガルナッチャという品種で造られたワインを合わせてみましょう。非常にジューシーで、果実の凝縮した甘みとやわらかいタンニンが特徴です。ボディ感もしっかりあります。
遠藤:タコスシーズニングには、クミンやオレガノがしっかりと効かせてあります。口に残った料理とワインがからまることでふわっと香りが広がるときがありますね。ワインが口の中を洗い流す目的でないことがわかります。
瀧川:ハーブの効いたタコスのお肉とトマトやチーズが口の中で合わさると、ワインとすごくよく合いますね!
ワインとスパイス&ハーブのマリアージュは「香り」が鍵
遠藤:今回、スパイスを使ったお料理とワインをマリアージュすることで、発見もあり、楽しい体験となりました。どんなワインにも、そしてスパイスにもハーブにも香りがあるので、まずは香りを楽しんでいただきたいですね。
瀧川:そうですね。スパイスやハーブを使った料理とワインのマリアージュは「香り」が鍵だとわかりました。
遠藤:ワインもスパイスも「地の恵み」つまり、その土地の恵みや香りを吸い込んでできた食べ物です。辛さの刺激で終わらせてしまうよりも、香りをのせて楽しんでもらえたら嬉しいです。
瀧川:手軽なこのシーズニングを使って、私もいろいろなマリアージュを楽しんでみたいと思います。今日はありがとうございました。