おばんざいとウイスキーのある食卓。“相性を探る”愉しみ方

2018.11.01

ウイスキーを飲む時、おつまみはどんなものを用意しますか?ナッツやチョコレートなどの乾き物を連想する人が多いかもしれませんが、実は普段の食卓に並ぶおかずとの相性もぴったりなんです。今回は「富士御殿場蒸溜所 ピュアモルトウイスキー」を例に、料理家・青山 有紀さんのつくる“おばんざい”とウイスキーのペアリングをご紹介します。

青山 有紀さん

京都市出身。美容業界を経て、2005年に京おばんざい屋「青家」をオープン。料理レシピ本の出版、企業の商品開発、レシピ提供、カフェメニュープロデュース、講演会などマルチに活躍。2018年10月より活動拠点を故郷・京都に移す。安全でおいしい食材に恵まれた自然豊かな山での生活を通して、新しいお店づくりをしていく予定。

竹重 元気さん

富士御殿場蒸溜所のブレンダー。2006年、ビール好きであることを理由に、キリンビール株式会社に入社。焼酎やチューハイブランドの商品開発に従事し、「ビターズ」や「キリン・ザ・ストロング」の開発メンバーとして活躍。その後、ウイスキーブレンダーとして「富士御殿場蒸溜所 ピュアモルトウイスキー」の開発を担当。

家族を想ってつくる毎日の食事

まずは、おばんざいと京料理について青山さんに伺いました。

青山さん(以下敬称略):旬の食材を使ってつくる家庭料理を称して“おばんざい”と言いますが、家庭ではおばんざいとは言わず、普通に“おかず”と呼んでいます。毎日食べても飽きない味付けであり、“普段着のごはん”というイメージですね。
一方で京料理は、上質な食材と職人の調理技術に裏打ちされた日本料理で、食べる側も非日常をいただくもの。けれどそれが毎日では、さすがにくたびれてしまいますよね。その点おばんざいは、つくる側も、食べる側も、気楽に楽しめる要素があるんです。

—肩肘張らずに楽しめる家庭料理こそがおばんざいということですね。では、そんなおばんざいづくりにおいて、どんなことを大切にしていますか?

青山:ひとつは季節感です。季節ごとの味わいや色あいは何より大切にしています。例えばこれから寒さが増しておいしくなる冬野菜は、海老芋にしても聖護院大根にしても、九条ねぎにしても、甘味を伴った食材が増えてきます。こういった素材の持ち味を大切にしています。
もうひとつは、どれもシンプルな味付けゆえ、つくる人の気持ちが味に反映されると思っています。イライラしてつくっては、素材の味も生きてはきません。食べる人のことを想って、いつでも楽しくつくることを心がけています。

旬の素材を用いて、手間をかけずにつくる常の日の献立。大切な家族を想ってつくるこの毎日の食事が、本来の意味でのおばんざいだと青山さんは言います。
そんなつくり手の真心がこもった家庭の味に、同じくつくり手の想いやこだわりが詰まった「富士御殿場蒸溜所 ピュアモルトウイスキー」を合わせてみましょう。普段の食卓にもすんなり馴染む飲み方を、ブレンダーの竹重さんに伺いました。

味の濃淡、香りと合わせる食中のウイスキー

初めに「富士御殿場蒸溜所 ピュアモルトウイスキー」の特長を伺いました。

竹重さん(以下敬称略):近年人気が高まりつつあるモルトウイスキーの中でも、この「富士御殿場蒸溜所 ピュアモルトウイスキー」は、ウイスキー初心者でも愉しめるように仕上げているライトタイプです。富士御殿場蒸溜所でつくられるウイスキーの多くは、リンゴや梨、パイナップルなどのフルーティで華やかな香りが立ちやすく、味わいもやわらかなのが特長ですが、その中でも飲みやすく、個性がわかりやすいという点を意識してつくりました。

—食卓に並ぶ料理とウイスキーを合わせる際、どういった点を意識すると良いでしょうか?

竹重:香味の“調和”を意識してみてください。ウイスキーが持っている香りや味と、食材の香りや味をマッチさせていくわけです。香味を合わせるだけで、相性もぐんとよくなる。それが“調和”ですね。 一方で、逆に違う香り同士を組み合わせることで香味の“相乗効果”が生まれる場合もあります。

—このあたり、ワインと近しいペアリングの考え方ですね。

竹重:まさにそうです。もうひとつは、“洗い流し”という方法もあります。から揚げにハイボールが代表例ですが、こってりした料理に炭酸割りを合わせることで、さっぱり愉しむことができます。調和、相乗効果、洗い流し、この3点を意識すると、ウイスキーと料理のペアリングを愉しめるでしょう。

—食中のウイスキーと言えばハイボールのイメージが強いのですが、おばんざいのような繊細な味付けの場合は、どんな割り方が向いていますか?

竹重:本来、ウイスキーの飲み方は自由ですから、好みに合わせて愉しんでいただいて構いません。ですが、料理との相性を探るという意味で言えば、よりウイスキーの香りや甘味、そして旨味を感じることができる水割りをオススメします。 まずはソーダ割りと同じくらいの量の水で割ってみるところから始めてみてはいかがでしょう。できれば氷は入れずに水だけで。薄い水割りから始めて、ちょっとずつウイスキーを足して調整していく要領です。

青山:素材の色や旨味を引き出す味付けを大切にしているおばんざいにも、濃い味、薄い味があります。ですから食事と合わせる時は、私もバランスの取りやすい水割り派。食べ続けられるおばんざいと同じように、飲み続けていられるというところにも、日常を感じますね。

ペアリングのヒントをお聞きしたところで、青山さんがつくってくださったおばんざいとウイスキーを合わせてみましょう。

料理の個性を引き出すウイスキーの割り方

おばんざいに欠かせない、“水菜とお揚げの炊いたん”。炊いたんとは、“炊いたもの”を表す京都の言葉。出汁や煮汁で具材にじっくり火を通す調理法です。
そんな炊いたんには、出汁の味わいを愉しめるよう、ウイスキーは薄めの水割りがちょうどいいと竹重さん。

青山さん特製の“切り干し大根とザーサイの卵焼き”。ごま油で香ばしく焼き上げているため、濃いめの水割りやロックとの相性がぴったり。もちろんストレートでもOKです。

隠し味にショウガをたっぷり効かせた“から揚げ”。ソーダで割ったハイボールはもちろん、爽やかなショウガの香りを引き立たせる水割りも竹重さんのオススメ。

ところで、おばんざいの繊細な味わいをウイスキーが邪魔してしまうことはないのでしょうか?焦点を香りと味覚に絞ってお二人に伺いました。

青山:京都のおばんざいは“香り”をとても大切にします。例えば、山椒や黒七味、柚子なんかもそうですね。こうした日本のスパイスと合うワインやお酒は、普段からペアリングの際に意識をしています。

竹重:おばんざいのようなやさしい味わいだったり、薄めの出汁でいただく場合は、やっぱりウイスキーも薄めが向いていると思います。反対に、蒲焼きや照り焼きのような醤油、みりんの風味を感じる味のしっかりした料理には、ウイスキーも少し濃いめにすると相性が良くなりますね。

—味の濃淡に合わせてウイスキーも割合を変えていくということですね。

竹重:はい。ウイスキーの種類で言うと、グレーンウイスキーが繊細な出汁に例えられる一方で、ヘビーなモルトウイスキーは個性が強く出汁というより主役になるため食事との相性は限定的になりがちです。けれど、「富士御殿場蒸溜所 ピュアモルトウイスキー」は、モルトの中でも軽いタイプなので、食材の深みを引き出すような、つまり出汁に近い感覚で愉しむこともできると思っています。

おばんざいとウイスキー、“接点”を見つける愉しみ

素材の味わいを活かした料理と、その味わいをさらに引き出してくれるウイスキー。
晩酌はもっぱらビールという方や、ウイスキーには乾き物という方も、いつもの食卓にウイスキーを取り入れてみませんか?
ワインを料理に合わせて替えるように、味や香りの濃淡を探りながらウイスキーと料理の“接点”を見つけてみる。
ウイスキーの愉しみ方が、また少し広がるはずです。