ワインから春を感じる

2017.04.20

春を感じる食材というと、やはりすぐに思いつくのは山菜でしょうか。お魚でいうと「鰆」はまさに春の魚と書きますが、飲み物に感じる四季はどうでしょう。例えばワインなら「春に飲みたくなるワイン」とはどんなワインが思い浮かびますか?そんなお話をソムリエの齋藤久平(さいとうきゅうへい)さんと一緒に、ワインを傾けながらしてきました。

ソムリエに聞く、春らしいワインの楽しみ方

春といえば新緑の季節。そんな爽やかな季節に合わせて、今回DRINXから齋藤さんに飲んでもらいたいとお持ちしたのは「シャトー・メルシャン 甲州きいろ香 2015」(以下、きいろ香)と「シャトー・メルシャン 長野シャルドネ アンウッデッド 2014」(以下、長野シャルドネ アンウッデッド)。どちらも爽やかな白ワインです。

まずは「きいろ香」から飲んでもらいつつ、春らしいワインの楽しみ方をお伺いしました。

—お仕事柄、普段からたくさんの種類のワインを飲む機会があると思いますが、「春らしいワイン」というと、どんなイメージがありますか?

齋藤さん(以下、敬称略):春というと爽やかなイメージから白ワインを好む方が多いと思います。でも、やはり白は白でもニュアンスの違いなどから様々な香りや味わいがあります。より香りがふくよかなもの、とっても繊細な香りを持つもの、スッキリとした味わいのもの、長い余韻が感じられるものなど。その中でも、春の初めであればやはり繊細な香りを楽しみたいですね。繊細な香りはインパクトこそ少ないですが、感じられると芽吹きや花の蕾が開くときのような、うきうきした気持ちになります。

—うきうきするような香りですか。繊細な香りっていろいろあると思いますが、例えるとどんな香りなのでしょう?

齋藤:ちょうど今いただいている「きいろ香」は名前からも黄色い印象ですが、飲んだときにたんぽぽを想起するような可愛らしくてとても繊細な香り。まさに今の春の気分です。しかも、ちょっとだけ余韻の中に感じられる柑橘の皮のような苦味が、春らしい感じを助長してくれています。

—確かに、苦味が春らしい印象を強めてくれるというのはわかる気がします。ちなみに、「長野シャルドネ アンウッデッド」に関しては同じく白ワインではあるものの、また違った印象ですか?

齋藤:そうですね。この「長野シャルドネ アンウッデッド」は”アンウッデッド”とあって樽での熟成を行っていないので、ブドウ本来の味や香りがしっかり出ていて、「きいろ香」に比べてより華やかな香りが南国のフルーツを思わせるようなジューシーな感じがします。なので、春というよりももう少し5月下旬のお天気のいい日や6月、7月などの少し汗ばんでくるような、「初夏」のイメージも与えてくれました。

—今おっしゃったような飲んだワインに感じる「たんぽぽ」とか「南国」というイメージって、飲んだときのどんなタイミングで感じるものですか?

齋藤:これは完全にファーストインプレッションですね。もちろん少し置くと空気に触れたり温度が上がったりして変わってくる香りもありますが、最初の印象は自分がこれまでにしてきた経験が瞬間で出るので、それはやはり大切にしていますね。

楽しみの幅が広がるペアリング

—今回、春をイメージして齋藤さんおすすめの旬の食材を使ったお料理も用意してみましたが、こういった旬な食材と合わせることでより楽しむためのポイントを教えてください。

齋藤:今日飲みたいワインというのを決めているとき、例えば白ワインだったら、方向性として液色がうっすらと「黄色系」のものと「緑系」のものの大体二つに分かれるんですね。もし先に飲むワインの液色を見ている場合は、この色に合わせて黄色系のワインには柑橘系のフルーツを使った料理を用意してみるとか、緑系のワインには葉物のお野菜を使ってみるというような、色をなぞって合わせてみるというのが簡単でやりやすいと思います。

—なるほど、色をなぞる。それであれば誰にでもわかりやすくて挑戦しやすいですね。春らしい食材の中には黄色も緑もいろいろありそうですし。ちなみに、今回、より春らしいと言っていただいた「きいろ香」は…

齋藤:それがね、名前の通り黄色といえば黄色なんだけれど、ちょっとうっすら緑がかっていて、淡いレモンイエローのような…。本当に繊細な色をしているんですけどね。なので、やはり葉物の緑色したお野菜等との相性がいいと思います。

—そうなんですね。今日ご用意したのは、

・菜の花と桜エビのソテー
・春キャベツとアサリのワイン蒸し
・スナップエンドウとアスパラガス、スモークサーモンのタルティーヌ

なので、葉物のお料理がいっぱいです。


齋藤:ええ。今回は先ほどお話したような「きいろ香」の春らしい印象と一緒に楽しめそうな食材をリクエストしました。どれも春を感じられる、相性の良いお料理ですが、菜の花のソテーなどはとくに「きいろ香」のかすかな苦味の余韻ともマッチして春らしさをより感じられますね。

ワインで四季を楽しむには

—今回は「春に合わせたワインの楽しみ方」をメインにお伺いしましたが、やはり四季に合わせたワインの合わせ方ってやはりあるのかなと思いました。ちなみに、他の季節についてはいかがでしょうか。例えば、先ほど「長野シャルドネ アンウッデッド」は、より汗ばむような初夏の感じがするともおっしゃっていましたよね。

齋藤:そうですね。やはり、日本ならではですからね、四季がはっきりしていて季節性に合わせて食べるものを、より楽しめるというのは。なので、特に日本のワインはそうした季節の移ろいに合わせて楽しむのがいいと思いますね。

やはり四季によって飲みたくなるタイプも異なると思うんです。今の季節なら、今日いろいろとお話ししたので想像もつきやすいと思うのですが、夏になったらより暑くなりますからスパークリングであったり、白やロゼに氷を入れて飲むなんてこともしますね。秋になれば食材も豊富になってきますし、味わいや色味の濃い食材も増えてくるのでロゼから赤に移行したり、白でも色味の濃い黄色のものや樽熟成が効いているもの。冬になると深みのある赤ワインを、寒さを感じながらじっくり飲みたかったりというのがいわゆる”四季”に合わせた王道の楽しみ方かと思います。

でも、場合によっては冬でも部屋の中はぬくぬくと暖かくしつつさっぱりした白ワインが飲みたくなることや、夏にクーラーが効いた部屋の中でゆっくり本でも読みながら赤ワインを味わうみたいなこともあると思うんですよね。

なので、もちろん季節やその時期の食材と合わせてワインを楽しむこともとっても大事ですが、それだけではない、シチュエーションや誰と飲むかなども含めてルールに囚われすぎず、総合的に今の気分に合うワインを選ぶ、というのも大事かと思いますよ。

季節とワインを自由に楽しむ。

いかがでしたか? ワインを口に含んだ時に感じる「爽やか」「たんぽぽ」「苦味」「南国フルーツ」などの様々な印象から季節に合わせてワインを楽しまれている齋藤さん。

ワインの色味からその季節の食材と合わせるポイントなどもお伺いでき、日頃ワインを飲む機会にすぐにでも取り入れられそうですね。でも、同時にそういったポイントやルールに囚われ過ぎず自由に飲むことの大切さも教えていただきました。

みなさんもぜひ、四季の中でもとくに気持ちを弾ませてくれるこの季節「春」を、ワインと一緒に、そして自由に楽しんでみてはいかがですか?