伝統と革新の融合 SVB京都の魅力に迫る
2017.09.21
2017年9月7日、東京、横浜に続き、SPRING VALLEY BREWERY(以下、SVB)が京都に「SPRING VALLEY BREWERY KYOTO」をオープンしました。築約100年の趣のある建物は、京の台所・錦市場からほど近く、通りを歩くと目を引く存在感があります。今回は、SVBの担当者の方に案内をお願いしつつ、SVBが開くイベントはほぼ皆勤賞というほどのファンである、りえさん(左)とあゆみさん(右)に新しい店舗を体験していただきました。
京都へ里帰り「SVB京都」へ引き継がれるDNAとは
2014年の創業当初から“日本ならではのビール文化”をひとつのテーマに、日本独自のビールカテゴリやビールの愉しみ方を提案することに挑戦してきたSVB。それらをもっと世界に発信していきたいと考えていく中で、日本的な価値が凝縮されている京都の食文化やものづくりを吸収し、京都の方とコラボレーションしながら日本ならではのビールづくりを発信していきたいと考えたそうです。
また、以前キリンビール京都工場があった頃、その工場の敷地内に、ビールづくりの技術の研磨や大きな工場ではつくることができないような限定ビールを醸造する「京都ミニブルワリー」がありました。
今のSVBには、その時の経験や想いも大いに引き継がれていることも京都出店を選んだ背景のひとつとのこと。
東京、横浜に続く3店舗目としての京都出店は、満を持しての里帰りという面もあり、懐かしさと新しさの融合は、店構えにも現れています。築約100年の建物は当時としては珍しく、一般的な町家の5〜6倍もの間口の広さがあります。もともとは木綿問屋だったようで、布物のため大きく広げる必要があったのかもしれません。その後さまざまな人手に渡りながらも、建物はそのまま引き継がれ、SVB京都でも建物や梁は活かしつつ遊び心を加えて改装されています。
では実際に、お店に入ってみましょう。まず通されたのは、建物に囲まれたノスタルジックな雰囲気の中庭。縁側もあり、とても気持ちの良い場所は、これからの季節、天気の良い日にはピッタリです。
「そういえば、京都のビールタンクの名前は何をモチーフにしたんですか?」と聞くあゆみさん。SVBの顔とも言える、店内外から見ることができるビールタンク。SVB東京の醸造用タンクにはそれぞれに名前が付いているのです。それを知っているお二人は、新店舗のタンク名も気になっていたようで、お店に来る最中にも、いろいろと考えを巡らせていたのだそう。
ヒントは「京都の地図」。どんな名前のタンクがあるかは、実際にSVB京都へ確かめに来てくださいね。
店内は京都の伝統を守りつつ遊び心が満載
中庭から店内へ入ると猫のイラストを発見し、思わず「かわいい!」と叫ぶお二人。
「なんで猫なんですか?」と聞くりえさん。もともとの建物のコンセプトが、“和風だけどちょっと現代風”。そのため、この絵も元ネタは浮世絵ですが、三味線を弾いていた猫にエレキギターを持たせたり、スケートボードに乗せたりして、遊び心を持たせています。
よく見るとSVBのキャップをかぶった猫を発見。「このキャップ、私も持ってるんです!」というエピソードも飛び出しました。
SVB東京では、お手洗いへの導線にユニークな絵があることをご存知でしょうか?こちらの京都店では、2階にあるお手洗いの入り口で「496」のラベルにも描かれている鹿が堂々とお出迎えしてくれています。実はこの絵、キリンのビールをよく飲んでくださる方にしかわからない、ちょっとした仕掛けが…ぜひ京都まで確かめに来てみてくださいね。もちろんお二人はすぐに気がついていました。
2階席のカウンターに置いてあるハイスツールにもちょっとした気遣いが。お二人が腰かけている椅子の足元をよく見てみると、実はひとつの椅子の前後で2種類の高さの足掛けがあり、身長が高い人でも低い人でもちょうど良い高さをえらぶことができます。
りえさんも「お酒が入ったときに足元が固定できないのは、足がブラブラしてしまう」と話していたので、痒いところに手が届く細部にまでこだわったデザインの椅子があれば安心です。
京都からヒントを得て開発された料理のテーマは“和クラフト”
次は、SVB京都ならではの料理をいただきましょう。
SVB京都の料理のテーマは“和クラフト”。日本的な良さが凝縮されている京都の食文化や物作りにヒントを得ながら、SVBの中でもエッジの立った店舗にしていきたいという思いで料理の開発をされたそうです。
実際には、京都のお麩屋さんやお漬物屋さん、農家の方などと話したり、さまざまな食材を合わせ、食べ比べながら、京都の食材とコラボした料理が数多く開発されました。さらにビールも、他のブルワリーの方や、京都のホップや麦の農家さんとの会話の中からヒントやアドバイスをいただきながら、原材料すべてが京都産というビールを現在開発中とのこと。
9月19日からは、「京都ミニブルワリー」時代に京都限定でつくられていた「1497」というビールに着想を得てつくった「Kyoto 2017」という限定品が登場。ヘッドブリュワーの三浦さんが、京都の食文化との相性にこだわり、京都産のお米を使用しているそうです。
今回用意されたおすすめのメニューは、
・ペアリングセット
・生湯葉と自家製セミドライトマトのカプレーゼ
・京丹波高原豚スペアリブの甘味噌漬け
・車麩のフレンチトースト
まずは喉も乾いたということで、ペアリングセットから。ビールに合わせるおつまみを再構築した京都店オリジナルの料理とのペアリングを愉しむことができます。
SVBではお馴染みのビアフライトのシートの絵柄に、京都店ならではの違いを発見し、「家でもペアリングする時に使いたいので、持って帰ってもいいですか?」と興奮気味に話すりえさん。
“JAZZBERRY×うり奈良漬とブリーチーズ”、“COPELAND×出汁オリーブ”など、口の中で絶妙な味わいを醸し出すペアリングの数々にはあゆみさんも「特許を取った方がいい」と言い出すほど。
味噌の甘みがおいしいスペアリブや、トマトの甘みとバジルが生湯葉によく合うカプレーゼ、さっぱりとして罪悪感なくぱくぱく食べられそうな車麩のフレンチトーストなど、それぞれの料理に合うペアリングのビールを試しながら食事を堪能されていました。
今回SVB京都を体験してくれたりえさんとあゆみさんも、東京や横浜とは全く違うコンセプトのお店に新たな気持ちで楽しめたようで、大満足な様子でした。
SVBでは、お客様や他のつくり手の方との“共創”を大事にしていて、生の声から学び、刺激を受けることで、自分たちだけでは思いつかなかったようなことが実現できているのだと言います。今回体験してくれた、りえさんとあゆみさんの「こんなビールはどうですか?」「あんなイベントがあったらいいな」などの声も、SVBのさらなる進化に繋がるのかもしれません。
そしてこれからは、京都の方たちの声もどんどん取り入れていきたいそうです。SVBのメンバーが京都の方とお話しをする中でわかったことは、伝統を大事にしながらも新しいものが好きだということ。京都に住む方の声も吸収し、伝統や文化に敬意を払いながら、東京や横浜とはまた違う、新しいことに挑戦していきたい、と話していました。
最近ますますビールシーンが盛り上がりをみせている京都。次回訪れる際にはぜひ、SVB KYOTOもスケジュールに組み込んでみてはいかがでしょうか。