装いも新たに。「グランドキリン」担当者が語るリニューアルに込めた想い
2019.08.01
日本のクラフトビールをより身近に愉しんでいただきたい。そんな想いから誕生した「グランドキリン」が、7月30日にリニューアルしました。人気ブランドが新しく生まれ変わった背景には、どんな想いがあったのでしょうか?ブランド担当者である鈴木 雄介に話を聞きました。
プロフィール
鈴木 雄介
大学卒業後、2009年キリンビバレッジに入社。
京都市内の自動販売機の設置やスーパーマーケット、酒販店などでのキリンビバレッジ商品の営業活動に従事。25歳のときに、キリン株式会社(現キリンホールディングス)コーポレートコミュニケーション部の広報担当として、キリンビバレッジだけでなく、キリンビールやメルシャン商品などの情報についてメディアを通じて発信。2017年からキリンビール企画部としてクラフトビール事業に携わり、2018年9月よりグランドキリンのブランドマネージャーに。
いま、クラフトビールに求められるものと、グランドキリンの出した答え
─最初に、グランドキリンのブランドコンセプトについて教えてください。
鈴木:クラフトビールが急速に浸透してきたのが、ここ10年くらいと記憶しています。現在、クラフトブルワリーは全国どこにでもあり、その数400ほど。お客様がクラフトビールを口にする機会も増えてきました。
ですが、クラフトビールは種類が豊富でビアスタイルも多様。お客様からすると味が想像しにくく、選び方がわからない、そもそもクラフトビールとはつまりどういうものなのかといった声もまだまだ耳にします。
そこで、味わいや香りが個性的でありながらも飲みやすい商品で、クラフトビールの代表的なビアスタイルを知っていただくきっかけになるようなブランドとしてグランドキリンを世の中に提案しています。
─グランドキリンを通じてビアスタイルについて理解を深める、いわゆるクラフトビールの教科書のような商品なのですね。
鈴木:はい。ビアスタイルには様々な種類があり、その数は100以上に分類されます。グランドキリンでは、その中でも味わいの違いがわかりやすいIPL(インディア・ペールラガー)、IPA(インディア・ペールエール)、ホワイトエールと3種のスタイルを提供しています。このビアスタイルの違いを味わうことで、自分好みのビールがわかってくると思います。
グランドキリンをきっかけにクラフトビールの奥深さを知り、最終的にはビールの愉しさを体感いただけたら、という想いで造っています。グランドキリンは、クラフトビールの入り口なんです。
よりわかりやすく、より個性的なビアスタイルへ
─今回、約2年ぶりのリニューアルとのことですが、大きく変わった点はどこですか?
鈴木:グランドキリンの定番商品であるJPL(ジャパン・ペール・ラガー)を、IPL(インディア・ペール・ラガー)という商品にリニューアルしたことと、パッケージデザインのフルリニューアルをしたことです。
─JPLからIPLに変わった理由は?
鈴木:前身となるJPLは、ここから「日本ならではのビアスタイル」を普及していきたいという大きな夢を持って独自のビアスタイルを創造し、誕生しました。
クラフトビール市場が広がってきたこのタイミングで、お客様にとってクラフトビールを身近に感じていただけるよう、味わいをよりわかりやすくブラッシュアップし、IPAとIPLの一文字違いの飲み比べを楽しんでいただけるようにしたのが今回のIPLです。
─具体的にどのような点が変わったのですか?
JPLは日本産ホップを一部使用したフローラルな香りと、豊かで香ばしい味わい、そして引き締まった上質な苦みが特徴でした。今回のリニューアルでは、さらにスパイシーで華やかな香りと、酵母由来のラガーのキレ味の良さを活かした味わいを追求しました。
─華やかでありながらキレもしっかりある。エールとラガーのいいとこ取りですね
鈴木:そうですね。IPLはアールグレイに近い、紅茶のような香りが持ち味。柑橘のニュアンスも感じさせてくれるし、アルコールも6%としっかりありますので、ボディ感も十分伝わってきます。
アルコール度数やボディ感など、じつはベースの骨格自体は変えておらず、大幅な味覚変更はしていません。JPLが持っていた個性にさらに磨きをかけ、わかりやすさを強調したのが、IPLです。IPAとホワイトエールはもともとお客様から味わいの評価も高かったため、IPLのデザインに合わせパッケージのブラッシュアップをしました。
遊び心をパッケージデザインにも
─パッケージのリニューアルでこだわった点は?
鈴木:グランドキリンらしい遊び心をパッケージデザインにも活かしたいと思い、表面と裏面でデザインを変更しました。
お酒のパッケージは、表面と裏面のデザインが同じであることが多いです。ですが、グランドキリンの新しいパッケージは背面にどのような味わいなのかわかりやすく表現したり、ビールに最適なグラスをイラストで紹介したり、あえて表面と裏面でデザインを変えています。
―本当ですね!細部まで見れば見るほど愉しめる工夫がされていますね。
缶を手にとることで、ご自宅でどのように愉しめるかをイメージできるようなデザインになっていると思います。こういったところでグランドキリンの大切にしている「遊び心」を表現しています。
他にも、クラフトビールの味わいの複雑さや奥行きを表現するため、色のグラデーションにもこだわりました。
─従来のものと比較してビアスタイルの表記が大きくなりましたよね?
鈴木:はい。ここもパッケージリニューアルの大きな変更点です。通常のパッケージってブランド名を立たせることが多いと思うのですが、今回のリニューアルでグランドキリンが伝えたいのはビアスタイルの違い。そこで、メインロゴ(GRAND KIRIN)よりもビアスタイルを際立たせるデザインにしました。
3つのビアスタイル、それぞれの愉しみ方
─グランドキリンの特徴であるそれぞれのビアスタイルについて、鈴木さんのオススメのペアリングや、どういったシーンに向いているかについて、教えてください。
鈴木:まずIPLは、華やかな香りもありつつキレもいい万能選手。バランスが良いので食事との相性がとても良いです。とくに和食に合わせやすく、毎日の食卓に違和感なく存在できるビールです。
─日本の食卓に合うビールですね。特におすすめの料理はありますか?
醤油やみりんを使った、こってりした味付けのものがいいでしょう。例えば和風ハンバーグ。ポン酢のさっぱりしたものよりは、照り焼きの甘辛ダレがよく合います。青しその香りもいいアクセントに。
また、肉料理だけでなく、マグロのお刺身や、キンキの煮付けなどもよく合いますよ。このビールは重層的な香りが持ち味で、出汁の複雑味と結びつきがいいんです。
─IPAはいかがでしょう?
鈴木:IPAはホップの華やかな香りが持ち味で、少し濃いめなのでビール単体でも愉しんでいただけます。例えば、食後に一人思索にふけるとき、映画を観ながらなど、ゆっくり時間を愉しみたいときにオススメのビールです。
─じっくりと愉しめるビールということですが、料理やシーンとの相性は?
鈴木:ペアリングならば、濃いめの味付けや肉料理が相性バツグンです。シーンとしては、BBQやキャンプ場に持っていくなどアウトドアにもオススメです。常温よりちょっと冷やす程度がもっとも香りが立ち、美味しくいただけます。クーラーボックスに入れての移動がちょうどいいかもしれません。家飲みの場面ならば、冷蔵庫の野菜室で保管してみてください。
─ホワイトエールは活躍の幅も広そうですが、おすすめのシーンはありますか?
鈴木:とくに女性からの支持が厚いのがホワイトエールです。他のビールは苦手だけどホワイトエールなら飲めるとおっしゃる方は本当に多いので、クラフトビールを試してみようという方に一度飲んでいただきたいです。
オススメのシーンですが、夏の暑い日や湿気がある日は、ホワイトエールがおいしく感じるはず。ベランダやテラスで飲むのにも向いていると思います。小麦を使ったビールですので、よく冷やしてから飲んでみてください。香りも味も格段に良くなりますよ。
特別感よりも日常のなかに溶け込むグランドキリン
普段はなかなか聞くことのできないリニューアルの舞台裏。開発者の想いを知ることで、より一層味わい深いものになるのではないでしょうか。
料理に合わせて、その日の気分やシーンに合わせて、好みのビアスタイルを選ぶ。特別なものとしてではなく、お酒のセレクションの一つとして、クラフトビールがすんなり入ってくる日常はきっと愉しいはずです。
新しく生まれ変わったグランドキリンをぜひ、いろんなシーンで試してみませんか?