ワインと味わう、日本。「塩尻」篇

2018.08.23

シャトー・メルシャンでは、その土地の気候・風土・生産者によって育まれるブドウを素直に表現し、その土地ならではの日本ワインをつくっています。そんな地域色溢れるワインと、同じ空気や水で育まれた地元食材のマリアージュを追求してお届けする「ワインと味わう、日本」。第3弾は長野県の塩尻です。

中信地方のソウルフード「山賊焼き」と「安曇野シャルドネ 」

昼夜の大きな寒暖差がブドウの栽培に適している長野県安曇野地区。ここで育った良質なシャルドネを、オーク樽で発酵・育成し、バランスのよい味わいに仕上げたのが「安曇野シャルドネ」です。

これに合わせる地元料理として選んだのは、長野県の塩尻市や松本市など中信地方の人々にとってソウルフードとも呼べる「山賊焼き」。
にんにくを効かせたタレに鶏のもも肉を漬け込み、片栗粉をまぶしてカラリと揚げる、もしくは焼いた料理で、中信地方の居酒屋や食堂のメニューだけでなく、家庭料理やスーパーの総菜としてもよく見られる、地元に根付いた料理です。

山賊と名がつく通り豪快さを感じるこの料理。ポイントは、付け合わせで用意する野菜も大ぶりに切り、素揚げして一緒に盛りつけること。山賊焼きだけでは重たい印象になりがちですが、同じように豪快に仕上げた野菜と合わせれば、カラフルで華やいだ一皿になります。

最初の口あたりから香りが丸く広がる「安曇野シャルドネ」は、樽育成によるまろやかさもあり豊かな味わいです。肉料理のしっかりした味付けにもよくマッチし、山賊焼きのにんにくの風味も丸く包んでくれます。

また、きりっとした酸とふくよかな果実感を併せ持つ「安曇野シャルドネ」のバランスの良さが鶏肉と野菜のどちらの味も引き立ててくれ、料理とワインの一体感を存分に愉しむことができます。

伝統的なおつまみ「蕎麦味噌」と「長野シャルドネ 2015」

寒暖の差が激しく水はけのよい土地が多いことから、長野県は蕎麦の栽培が盛んになりました。県内にある蕎麦屋の数も日本一と言われています。
その昔、蕎麦は麺としてではなく、団子や蕎麦がきとして食べられていました。それが江戸時代になって「蕎麦切り」として、現在のような麺状の料理となって信州、つまり今の長野県から広まったと言われています。

そんな歴史ある信州蕎麦の実をつかって、伝統的なおつまみ料理「蕎麦味噌」をつくってみましょう。
合わせるワインは、長野県の各産地で収穫されたシャルドネを主体に、ステンレスタンクおよびオーク樽で育成した「長野シャルドネ 2015」。丁寧に醸造し、品種の特長を表現した正統派のシャルドネです。

まずはお酒とみりんをフライパンで沸騰させ、アルコール分を飛ばします。そこに、味噌、砂糖の順で混ぜ合わせていき甘さを調節。あとは火からおろし、炒っておいた蕎麦の実を加えてできあがりです。

蕎麦味噌の甘辛さには、柑橘香る「長野シャルドネ 2015」のフルーティさがよく合います。蕎麦味噌とワインの心地よいハーモニーが口の中で広がっていきます。

ワインのおつまみにするならひと工夫加えて、バゲットと一緒にいただきましょう。
バゲットはオリーブオイルを塗ってトーストすることで香ばしさを加え、さらにクリームチーズを塗ってから蕎麦味噌をつけるのがオススメ。味噌とチーズ、和と洋の発酵したもの同士の不思議なマッチングが、ワインとも相性抜群です。

蕎麦という素朴な素材が生み出す味わいの広がりに、ワインの新しい愉しみ方を見つけられる組み合わせになるでしょう。

香ばしさと独特の食感の「揚げ蕎麦」と「長野シャルドネ アンウッデッド 2015」

信州蕎麦と言っても、種類や食べ方は土地によって変わります。日本三代蕎麦のひとつとされる「戸隠蕎麦」、蕎麦の実の中心部分だけを使った「更科蕎麦」、さわやかな苦味のある「だったん蕎麦」さらには「霧下蕎麦」や「すんき蕎麦」「とうじ蕎麦」「行者蕎麦」など。さまざまな種類と、食べ方が存在するのが信州蕎麦の魅力です。

ワインも蕎麦同様、つくり方や熟成のさせ方にはさまざまな方法が存在します。「長野シャルドネ アンウッデッド 2015」は、樽をつかった一般的な育成をせずに仕上げることで、シャルドネのもつやわらかな口当たりとふくよかな味わいをストレートに表現したワイン。長野の土地や水、気候など、長野のテロワールから生まれた味わいを、素直に感じられることでしょう。

この「長野シャルドネ アンウッデッド 2015」にピッタリな蕎麦料理として、油で揚げた「揚げ蕎麦」をご紹介します。

蕎麦は乾麺の状態で揚げてもおいしいのですが、今回は一度茹でてから丸くまとめて、高温の油でサッと揚げます。それだけで、手でつまんで食べやすい見た目もユニークなワインのおつまみに。

「揚げ蕎麦」は、そのままでも蕎麦の香ばしさと独特の食感を愉しめますが、もうひと手間を加えて、ディップソースをつけていただくのがオススメです。
今回用意したのは、わさびとサワークリームを合わせたものと、梅肉をみりんと出汁で溶いた梅ソースの2種類。それぞれのソースが、蕎麦に対する薬味、蕎麦に対する蕎麦つゆのような役割を担ってくれます。

揚げたことによって蕎麦の香りがより一層感じられる揚げ蕎麦には、白桃を思わせるすがすがしいフレッシュさを持つ「長野シャルドネ アンウッデッド 2015」をよく冷やして合わせます。ワインの冷たさによって揚げ蕎麦の熱さがおさまっていく過程で、マリアージュの風味の変化も味わえますよ。

同じ産地の日本ワイン×食材だから生まれるハーモニー

今回ご紹介した白ワイン3本は、同じ長野県内でつくられていながら異なる味わいや香りを持っています。それぞれのワインと同じ土地や気候の中で育まれた食材とのマリアージュを、ぜひ味わってみてください。