3人の視点で語るグランドキリン「WHITE ALE」開発秘話

2017.10.05

店頭に並べられているさまざまな商品。そのひとつひとつに秘められた開発者の想いが知られることは、あまりありません。そこで、9月26日にグランドキリンから新たに「JPL(ジャパン・ペールラガー)」「IPA(インディア・ペールエール)」と並ぶ定番商品として発売された「WHITE ALE(ホワイトエール)」の開発秘話を、ビール醸造を担当された妻鳥奈津子さん、パッケージデザインのディレクションをされた小野雅子さん、ブランド担当である白石大悟さんの3人にお伺いしてきました。

“白ワインのような香り”が採用されるまで

—「WHITE ALE」を開発されたいきさつを教えてください。

白石さん(以下、敬称略):商品を開発するときは、基本的にグランドキリンのブランドチームがコンセプトを決めて、醸造家チームとデザインチームに展開します。グランドキリンは、クラフトビールは知っているけれどどれを飲んだらいいかわからないという方や、日常的に愉しめる手軽なクラフトビールとして、ビールの多様な世界を伝えていこうというコンセプトで、定番商品と季節限定品を販売しています。

—今だと「JPL」と「IPA」という定番商品の二本を販売していて、季節限定品では「ひこうき雲と私」、「梅雨のエキゾチック」なども販売していましたよね。

白石:定番商品の「JPL」はラガータイプ、「IPA」はエールタイプと、ふたつのカテゴリーのビールですが、どちらも強いイメージや味わいでした。その上で、新しい定番商品として、ビールの多様性や広がりを見せた違う切り口のビールをと思ったときに、女性をターゲットにしたやさしい味わいのビールはどうかと考え、醸造家チームとデザインチームに同時に展開しました。

妻鳥さん(以下、敬称略):ビールの味は、それらのコンセプトを受けてつくり始めたのですが、最初の名前は違いましたよね。「はんなりエール」とか「みやびエール」だったんですよ。

白石:そうだ、懐かしい!情緒的にゆったり愉しむシーンを想像して、最初「はんなりペールエール」とか「はんなりホワイトエール」という名前も候補にありましたね(笑)

妻鳥:このビールは白ワインのような香りのするネルソンソーヴィンホップを使っています。でも、はじめから使おうと思っていたわけではなく、いろいろなスパイスや、ゆずピールを使った試作品もつくりました。最初に聞いたコンセプトが“女性向けの華やかな飲みやすいエール”で定番商品ということも考えて、さまざまな可能性を試しました。

白石:それで一般の方に試飲してもらう機会があったときに、白ワインであれば聞いたこともあって、普段からビールを飲みなれている人でなくても味わいがイメージできるということで、評価が高かったんです。だから、より直感的に味のイメージやシーンが想像できる白ワインをコンセプトの中心にして、ビール自体やパッケージを開発してもらうよう最終的に相談しました。

香りや苦味のすり合わせ

—ビールの試作品のテイスティングには全員立ち会うのですか?

白石:ビールの中味を相談するときは、ブランドチームと醸造家チームですね。

小野さん(以下、敬称略):私は、ある程度完成したものを飲ませてもらいました。

妻鳥:3回試飲会をしましたが、各5〜6サンプルずつくらいは飲み比べたので20種類ほどつくりましたね。苦味や香りの強さを中心に、できたものがコンセプトに合っているかを確認していきます。テイスティングで香りを嗅ぐときはグラスに鼻を近づけたり、グラスを回して香りを立たせてから確認します。あとは、ビールを冷やしたままだと香りにくいので、香り立ちがよくなるよう常温に近づけてから飲んだりもしますね。

白石:手で包んで温めて飲むので、異様な光景ですよね(笑)だから、サンプルを持ってくるときも冷えすぎているといけないので、試飲会の少し前に冷蔵庫から出しておきます。

妻鳥:香りが良いこのグランドキリンシリーズは特にそうかもしれないですね。

白石:グランドキリンで実施している「びあのわ」のビールセミナーでも、お客様にはぜひ冷蔵庫から出したら少しおいてから飲んでくださいと伝えています。

—味や香り、原材料などさまざまな組み合わせの試作品の中からすり合わせていくのだと思いますが、どのように絞っていくのですか?

妻鳥:コンセプトを聞いて最初につくってから完成するまで、味や香りの振り幅はとても広かったです。最初のゆずピール入りも含め、酵母の種類もだいぶ変えました。

白石:そうだ、酵母も変えましたね。

妻鳥:最初はヴァイツェンっぽい酵母を使っていましたが、飲みやすいというより、しっかりとした飲みごたえの本格的なヴァイツェンの香味になりすぎたので、採用はしませんでした。いくつかの試作品をベースに、そこからホップの強さを落とそう、苦味を落とそうなどと言いながらすり合わせて、調整したものを次の試飲会に持っていきます。

白石:酵母自体の香りが強いものを使ってしまうと、ネルソンソーヴィンホップ由来の白ワインっぽい繊細な香りが感じられなくなってしまうので、クセのない酵母を採用しました。あと、ホワイトエールらしいやさしい味わいや口あたりも含めて、苦味の強度は最後の最後まで調整してもらいましたよね。

妻鳥:そうですね。一番最後の試飲で決めたのは苦味でした。最初に試作品をつくったときはホップの香りを強く出したいからと、ネルソンソーヴィンホップを効果的に使用しました。しかし、それに伴って渋みや後味のざらつき、苦味が目立ってしまったので、その辺りを少しずつ調整していきました。最終的には、小麦麦芽でやわらかく適度な酸味や飲みやすさを、ネルソンソーヴィンホップでフルーティな香りを表現した「WHITE ALE」が完成しました。

ビールの味を伝えるデザインのつくり方

—パッケージのデザインは、どのように進めていくのでしょうか?

小野:最終的に決まったコンセプトの味のビールを試飲させてもらったら、そこからイメージをふくらませます。

妻鳥:ビールとパッケージが同時進行で動いているので、最終段階までパッケージを見ることはほとんどないのですが、こちらでつくった試作品を飲んでもらっているので、チーム内のイメージのすり合わせはできていると思います。

小野:進んでいく中で、パッケージのイメージとビールに大きな差がないか、感覚的にこの味がイメージできるかも考えます。カラーリングはここに決定するまでかなりの数を検討しましたが、ホワイトエールは爽やかなイメージだったので水色をベースにしました。

白石:小麦系のビールのパッケージは、白や水色、黄色が多いので、このデザインを見たときにもホワイトエール系のビールだとお客様が想像しやすいと思います。オレンジ色は、より華やかさやビールらしさを表現できるのではと考えました。

—一見すると気付かない部分でこだわった部分はありますか?

小野:手前にある水色は小麦、黄色とオレンジは大麦をイメージしたデザインなのですが、じつは微妙に形が違うんですよ。

白石:大麦の方がちょっと縦長で、小麦の方がちょっと丸いんですよね。

小野:あとは、遠目だとちょっとわかりづらいのですが、手に取ってもらえたらわかる、ぽこっとした手触りのラメをあしらいました。グランドキリンのシリーズは毎回印刷仕様にもこだわっていて、それぞれのコンセプトに合ったデザインを考えるようにしています。

白石:このラメは「夜間飛行」でも採用しましたが、それを進化させたのが「梅雨のエキゾチック」。そして今回初めて、定番商品にもラメをあしらいました。

妻鳥:印刷するのが大変そうですよね。

小野:印刷会社さんとの打ち合わせは、毎回入念にしていますね。

妻鳥:「WHITE ALE」は、途中のデザインも見ていて変遷はわかっていましたが、完成版を見ても女性らしくてかわいいなと思いました。

シーンを想像してつくるビールへの想い

—定番商品と季節限定品、どちらも小野さんがデザインされたのですか?

小野:そうです。定番商品は一年中置かれるものなので、ビールらしさを大事にしたデザインにしています。一方、季節限定品の方では自由度の高いデザインでぱっと華やかさを演出して、グランドキリン全体が盛り上がれるよう意識しています。

白石:定番商品と季節限定品は、ベースとする狙いが違います。定番商品は原料やビアスタイルにフォーカスしていて、季節限定品は季節に敏感な日本人の感性に訴えたいと思い、季節を切り取ったデザインで表現しています。

小野:「WHITE ALE」のイメージは水色でしたが、水色でもいろんなパターンがあります。そこから背景の色は、この緑がかったエメラルドグリーンに見えるようにしたのですが、絶妙な色の調整が大変でした。

—最後に、「WHITE ALE」をどのように愉しんでもらいたいかをお伺いできればと思います。

白石:今のグランドキリンが好きな方も、新しい切り口の「WHITE ALE」を愉しんでもらいたいです。パッケージのデザインは女性を意識していますが、味は男女共に愉しんでもらえるものですし、男性も拒まないデザインも意識しました。やさしい味わいなので、食事前に軽く飲んでもらったり、昼など明るい時間帯に飲んでもらうのにも良いと思います。今までのグランドキリンシリーズは私向きじゃないと思っていた方も、これを機会にぜひ「WHITE ALE」を手に取ってもらえたらと思います。

小野:グランドキリンファンの方はもちろん、今までビールにあまり興味がなかった方も、パッケージを見てビールを飲むきっかけになってくれたらと思います。定番商品も遊び心を大切にしているので、そんなパッケージを店頭で見かけて飲んでみようかなっていうような気持ちになってもらえたら嬉しいです。

妻鳥:パッケージがかわいいのでジャケ買いしてもらいたいですね。今までビールは飲めなかったけど、これなら飲めるかなっていう関係をつくれたり、ビールビギナーの方からそういう声が聞けたら嬉しいです。

普段はなかなか聞くことができない、ブランドチーム、醸造家チーム、デザインチーム三者三様のビール開発秘話。

多くの人に届くよう遊び心も交えつつ細部にまでこだわり、それぞれの想いを乗せた「WHITE ALE」を知ることで、より一層味わい深いものになるのではないでしょうか。

店頭に並んだ「WHITE ALE」、ぜひ手に取って想いを確かめてみてください。

オススメの商品

コンテンツ
カテゴリ
テーマ