とれたてホップのビールがおいしい理由

2017.09.28

皆さんは「ホップ」をご存知ですか?ビールづくりには欠かすことの出来ない素材のひとつが「ホップ」。多くのビールに原材料として使用されているホップは、ビール独特の華やかな香りとさわやかな苦味をもたらしてくれます。通常のビールづくりでは乾燥加工されたホップが使用されていますが、今の時期だけ“とれたて”のホップをつかったビールが味わえるんです。今回は岩手県遠野市に赴き、実際にホップがどのように実り、収穫されているのか。とれたてのホップを使ったビールにはどんな魅力があるのかを探ってきました。

“ビールの魂”ホップってなに?

ビールに華やかな香りとさわやかな苦味をもたらしてくれるホップ。
ビールに使うのは、ホップというつる性植物の実でも葉でもなく毬花(まりばな)だけです。球形の手まりのような形の花なので毬花と呼ばれます。
また、ホップは、雄株と雌株に分かれており、ビールに使うのは雌株の毬花だけ。
ホップの収穫時期は年に一回。長く伸びたつると濃緑の葉の合間から、実と見まがうばかりにたわわに咲いて最高の姿を見せてくれる毬花。
その自然の恵みをできるだけそのままにビールに使うことができたなら...
どんな味のビールが出来あがるかワクワクする方も多いのではないでしょうか?
国内第一位のホップ生産量を誇り、“ホップの里”とも呼ばれる岩手県遠野市。(※)
いったい、どのようにしてホップは育ち、そして収穫されているのでしょうか?

※ H28年実績

遠野の風物詩 ホップ収穫

ホップ収穫初日の朝、岩手県遠野市は一面の朝もやの中に包まれていました。このもやは昼前にはすっきりと晴れ、目にしみるような初秋の空が広がります。冷涼で湿潤、そして日当たりの良い遠野の気候と地形が、ホップ栽培にはとても適しているそうです。5メートルほどもあるホップ棚には、毬花が朝つゆに濡れて可憐に咲いていました。
毬花をひとつ摘んで真ん中で割ってみると、芯の周りにレモン色のルプリン粒がしっかりと詰まっていました。このルプリン粒こそが「ビールの魂」、精油とさわやかな苦味のもとです。新鮮なホップは豊かな香りの中に、とてもさわやかなフローラルな香りが感じられます。

ホップ棚の高さは5m以上。
リフトに乗ってつるごと鎌で丁寧に刈り取ります。
トラックに満載されたホップは、ところどころで小さな房の落し物をしながら、近くの大型収穫センターに運び込まれます。ヘンゼルとグレーテルの物語に出てくる「パンくず」のように、ちょっとした道案内にもなり、付近のみなさんも「今年もホップの収穫がはじまったんだな」ということがわかるそうです。

“とれたて”の魅力

ホップ収穫センターでは、専用の機械でつるから毬花を摘みとります。残った葉や傷んだ毬花は、丁寧に人の手で選別されコンベアから取り除かれます。次々と到着するホップ満載のトラック、コンベアに広がる毬花のグリーンカーペット、ホップの香りが一杯に立ち込めた収穫センターは大忙しです。

コンテナに詰められた毬花が、大型冷蔵トラックに積み込まれた後、冷蔵庫内には二酸化炭素の冷気が勢いよく吹き込まれました。
凍結粉砕工場までホップの鮮度を守るため、冷蔵庫内の酸素を追い出すのです。

収穫したホップは、速やかに凍結します。
生のまま急速に冷凍することにより、みずみずしい香りを保つことができるのです。
通常のペレットホップ(※)は、乾燥したハーブや草木を思わせる香りであるのに対し、生のまま凍結したホップは、青草や果実のような新鮮な香り成分がたくさん含まれており、フローラルな香りが際立っています。
外国産のホップを生の状態を保ったまま冷蔵や冷凍で輸入するのは様々な課題がありすぎてとても難しいでしょう。日本で良質なホップが栽培されているからこそ可能となる、世界でもほとんど例をみないホップの使い方なのです。
凍結したホップは、粉砕時の温度上昇を避けるために、液体窒素下で凍結したまま粉砕します。「そこまで?」と思われるほどに鮮度への細心の注意を払うのは、やはりデリケートな摘みたてのホップの“みずみずしく華やかな香り”を保ちたいという、造り手のこだわりなのです。

※ ホップの毬花を、乾燥し、圧縮・固形化したもの。

“とれたて”の味わいを愉しむビール

こうして細部にこだわって収穫された新鮮なホップは、キリンビールの工場へと運ばれていき、ブリュワーの手によってビールづくりに使用されます。
そうしてつくられたのが、SPRING VALLEY BREWERYの「HopFest2017」。
毎年この時期だけ愉しむことができる新鮮なホップを贅沢に使用した「HopFest2017」は、果実を連想させるみずみずしい香りを持ち、洗練された爽快な味わいが特長です。
皆さんも秋の訪れを感じながら、今年の“とれたて”の味わいを愉しんでみてはいかがでしょうか。