【2017年3月レポート】シャトー・メルシャン テイスティング&マリアージュセミナー

2017.06.08

同じ産地の同じブドウ品種から造られた、ロゼワインと赤ワインでは、どんな違いがあるのかご存じでしょうか? 知られざるロゼワインと赤ワインの関係について、おなじみ米川正義講師がお届けした渾身のラストセミナーです!それぞれの製法や、味わいの違いを、ぜひレポートでご体験ください!


毎回違ったテーマの元、より深くワイン、そしてシャトー・メルシャンについて掘り下げ、大変ご好評をいただいております“シャトー・メルシャン テイスティング&マリアージュセミナー”。1周年を迎えた3月は、同じ産地の同じブドウ品種から造られたロゼワインと赤ワインでは、どんな違いがあるのか、をテーマに開催しました。
例えば、長野県上田市にある自社管理畑、椀子(マリコ)ヴィンヤード産のロゼワインと赤ワインではどのような違いや共通点があるのか。ロゼワインと赤ワイン、それぞれの製法や味わいの違いを目で舌で感じ、体験いただきました。

意外と皆さまに知られていないのが、ロゼワインの造り方。基本的に果汁だけを発酵させる白ワインと違い、赤ワインは黒ブドウを皮と種子ごと発酵させ、果皮からの成分を引き出すことでワインが赤く色づきます。実はロゼワインも赤ワインも原料は同じ黒ブドウ。そしてロゼワインはいくつかの製法がありますが、基本的な造り方は、赤ワインと同じ。ただし、黒ブドウを皮ごと発酵させ、液がピンク色になったタイミングで、液と果皮を分ける、つまり先に液だけを抜くことであのきれいなロゼ色のワインになります。この方法は、一般的に液の一部だけを抜いてそれをロゼワインにし、そして残った液はそのまま赤ワインにします。そのように造った赤ワインの場合、液に対して果皮の割合が高くなるため、よりしっかりした赤ワインになるのです。

そんなロゼワインと赤ワインの関係の説明の後、体験いただいたこの日のワインは、スパークリングワインからスティルワインまで、全部で6種類。ロゼスパークリングワイン2種類、ロゼワイン1種、赤ワイン2種をご用意いたしました。同じロゼのスパークリングワインでも、産地・品種が違うことによりどのような差が生まれるのか、同じ産地・品種でもロゼワインと赤ワインでどのような違いが生まれるのか、皆さまご自身で確かめていただきました。

特に皆さまにご実感いただいたのが、ロゼワインのポテンシャルとその万能性です!日本では、ワインというと赤ワインか白ワインの二択で、ロゼワインは選択肢に入らない・・・という方もまだまだ多いのですが、実はいま海外では空前のロゼブームが進行中。すっきりとした白ワインのよさと、しっかりとした赤ワインのよさのいいとこ取りをしているのがロゼワイン。いろいろな食を受け入れ、アレンジを加え、自国のものとして取り込んでしまう柔軟性のある日本の食卓に、まさにロゼワインはぴったりです。いろいろな好みにもうまくマッチしてくれるのもロゼワインの魅力。赤ワイン派も白ワイン派も、オールマイティに受け入れてくれるその懐の深さに、改めて驚かれているお客様が印象的でした。

この日の講師はおなじみのシャトー・メルシャン 米川正義。“シャトー・メルシャン テイスティング&マリアージュセミナー”が始まってちょうど1年講師を務めた米川ですが、実は講師を務めるのはこの日が最後。米川がおススメする特別なワインを含めた渾身のセミナー、ご参加いただいた皆さまに楽しんでいただけたなら嬉しく思います。
最後に米川から皆さまへのメッセージ、そして当日のワインのテイスティングコメントを、そのワインのトピックスを交えながらご紹介させていただきます。次回からのセミナーはまた装いを新たに、ワインのある生活をより豊かにするお手伝いをさせていただきます。ご興味のある方のご参加、ぜひお待ちしております!

■米川正義からのメッセージ■
「今回のセミナーは、同じブドウ品種で造られたロゼワインと赤ワインの香味の違いを実感していただき、それぞれのベストマリアージュを発見できれば、きっと、ワインのある生活がより豊かになると確信し企画いたしました。実際の内容は、皆さまの大変ご熱心なご質問により、製造方法だけでなく、栽培環境・栽培方法の違いや異なるヴィンテージによる瓶熟成の違いにまで話が及び、とても内容の濃いセミナーとなりました。これは今回に限ったことではなく、セミナーを作るのは、講師ではなくご参加の皆さま全員だという事を改めて実感しました。私が講師を務めるのは今回が最後になりますが、シャトー・メルシャンでは、これからも次々とお客様に喜んでいただける提案をさせていただきます。」

【テイスティングコメント】

◆『長野のあわ 2014』

熟したベリー系の香り。ドライミディアム。強い酸は感じないが、ボディ感のある優しい酸が心地いい。

◆『日本のあわ 穂坂マスカット・ベーリーA』

熟したイチゴのような香り、きりっとした酸。チャーミングなスパークリングワイン。

◆『マリコ・ヴィンヤード ロゼ 2014』

2012年、2013年は天候に恵まれよいヴィンテージだったのに比べ、2014年は苦労した年、つまりつくり手の腕が光る年。他の品種に比べ、メルローは収穫が遅かったのでブドウの品質が挽回できた。ちょっと濃いめの色合い、きれいなピンクで縁にかすかに黄色のニュアンス、熟成した感じがある。
香りはきれいなベリー系の香り、ステンレスタンク発酵なので、ブドウの香りから来る香り、甘い香りもある。ドライ、残糖なし、『長野のあわ』と似て、厚みがある。

◆『シャトー・メルシャン 穂坂マスカット・ベーリーA セレクテッド・ヴィンヤーズ 2011』(ワイナリー限定品・完売品)

『日本のあわ 穂坂マスカット・ベーリーA』と産地も品種も一緒だが、ヴィンテージと製法が違う、収穫のタイミングも変えている。今までは早め(9月初旬)の収穫でフレッシュに仕上げていた。収穫を遅らせることで凝縮度が上がる(糖度が上がり、エキス分が上がる)。これは9月下旬に収穫した。収穫を遅らせることで酸が下がるのはワインとしては致命的だが、このエリアはもともと酸が高いブドウがとれるので、よいものができる。香りは甘い香り、熟したストロベリーっぽい、メルローのようなカシスなどの黒い果実の香りも出てくる。通常はステンレスタンクだが、これはすべてオーク樽で発酵、育成することで、ヴァニラ、コーヒーを思わせる複雑味もある。酸が高いが、熟成によって柔らかくなっている、通常のマスカット・ベーリーAにはないタンニン分も感じる。

◆『シャトー・メルシャン マリコ・ヴィンヤード メルロー 2011』(完売品)

ステンレス発酵、オーク樽で18ヶ月間ゆっくり育成させたワイン。2011年は台風が2回上陸した難しい年。収穫時は天気が良かったので品質は上がったが、収穫量が大幅に減り、いいヴィンテージだが苦労があった。
色合いはまだまだ若い濃い紫のルビー色、縁はピンク、まだ熟成を感じさせない。香りはよく熟した黒いカシス、ブルーベリー、若干ヴァニラの香りもある。
とてもおいしい、酸とタンニンのバランスがよい、飲み頃が始まったワイン。もっと熟成させたい方はもっと熟成させてもよいワイン。

◆『シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー 2011』(完売品)

1000本ちょっとしか造れないワイン、すでに完売。『マリコ・ヴィンヤード メルロー 2011』(以下『マリコ』)より『桔梗ヶ原メルロー 2011』(以下『桔梗ヶ原』)の方が熟成している感じを受ける。
『マリコ』はフルーティな香り、『桔梗ヶ原』はフルーティさもあるが、濡れた落ち葉、獣的な香り、甘いスパイス(シナモン・ヴァニラ)もある、複雑味がとてもあり、同じ品種でも構成が全く違う。
同じヴィンテージの同じメルローなのに全然違い、『マリコ』はタンニン主張、『桔梗ヶ原』はタンニンと酸のバランスが絶妙で、ビロードのようなテクスチャーが広がり、上品な酸が来て、すっと消えた後、厚みのあるタンニンが覆ってくれる。
まだまだ熟成できるが、『桔梗ヶ原』は熟成が難しいワイン。通常ワインは右肩上がりで熟成が進むが、フランスの高級ワインは波型で熟成が進む。好きなワインは箱買いして毎年開け、タイミングを変えて味をみることで、どのように熟成が変化するか実感できる。

◆『シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー 2001』(完売品)

かなり熟成が進んでいる。獣の香り、果実味もあるが、まだまだ可能性を感じる。同じ『桔梗ヶ原メルロー 2011』(以下『桔梗ヶ原11』)とは、熟成の違いだけでなく、『桔梗ヶ原 メルロー 2001』(以下『桔梗ヶ原01』には、特徴的にピーマンっぽい香りがある。
ピーマンの香りは、メトキシピラジンで、日本のメルローではこのメトキシピラジンをとるのに苦労する。日照量を上げるとこの香りが減る。この『桔梗ヶ原01』は棚栽培。実の上に葉っぱがあり、日照がさえぎられるため、メトキシピラジンが残っている。これを解決したのが、垣根栽培。もちろんそれだけでなく、より品質を上げるための「粒選り」「除梗」などを丁寧に行っている。
棚栽培と垣根栽培の違い、そしてワインが10年経つとどれだけ違うかを感じていただくためにご用意した。