これから乾杯は「スパークリングウイスキー」で。飲み方で変わるウイスキーの愉しみ方 [Blend Your Curiosity vol.8]

2019.06.27

「Blend Your Curiosity」は、マスターブレンダーである田中城太が、ブレンダーの仕事を通して発見したウイスキーの新しい愉しみ方をお届けする全11回の連載企画です。第8回目となる今回は、ウイスキーの「飲み方」で変わる愉しみ方について。田中自身が愉しんでいる飲み方と併せて掘り下げていきます。

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「グラス×割り方×シーン」の組み合わせで変わるウイスキーの愉しみ方

個人的なエピソードにはなりますが、先日とても嬉しいことがあって、仲間を誘ってお祝いのパーティを開くことにしました。せっかくの機会だったので、最初の乾杯をシャンパンでもなく、ビールでもなく、ウイスキーで乾杯したいと思いました。

いろいろと考えた末に用意したのが、シャンパンフルートグラスをキンキンに冷やし、そこへ冷やした富士山麓とソーダを注いだ「富士山麓スパークリング」。フルートグラスの中で泡がシュワシュワと立ち上がる様はまるでシャンパンのようでした。

味わいも新鮮でしたが、それだけではなく、飲むと晴れやかな気分になり、改めてウイスキーはいろいろな愉しみ方ができる自由なお酒だと感じたひとときでした。

ワインであれば、赤・白の違いはもとより、タイプ別にグラスを替えて提供されることが多いと思います。これはグラスの形状を変えることでワインそれぞれの特徴が活きた味わいを愉しむことができるからなのです。ウイスキーも同様にグラスの形状や大きさを変えるだけで味わいは変わります。

たとえば、チューリップ型のグラスと比べて、ロックグラスやオールドファッションド・グラスのような立ち上がりがストレートのものでは、香りの立ち方や味わいが異なります。熟成から生まれた複雑で繊細な香りを堪能するにはチューリップ型がおすすめですが、スモーキーなモルトやパンチのあるバーボンなどは、ストレート型で味わってみると、個性的な一面を愉しむことができます。

このように、ウイスキーはロックやハイボールなどの割り方だけではなく、飲むシーンや飲み方、味わい方によってグラスを変えることで、違った愉しみ方ができるお酒なのです。

今日は飲むシーンや飲み方で変わるウイスキーの愉しみ方についてご紹介したいと思います。

割り方別のウイスキーの愉しみ方

ウイスキーの割り方には、ロック・水割り・ソーダ割り・お湯割りがあります。ストレートにはショットグラス、ロックにはオールドファッションド・グラス、水割り・ソーダ割りにはタンブラーなどが一般的に用いられますが、グラス選びに少し工夫をこらすことによって、気分を変えたり、違った味わいの変化を愉しむことができます。また、飲むシーンによって割り方のアレンジや味わいのアクセントとして、オレンジピールなどガーニッシュ(飾り)を加えることで、愉しみ方をさらに広げることができます。

ここからは、具体的にそれぞれの割り方とおすすめの飲み方をご紹介します。

オン・ザ・ロック

大きめの氷をグラスに入れ、ウイスキーを注ぎます。ウイスキーに溶け込んでいた香味が花開き、口当たりは柔らかくまろやかになります。氷とウイスキーが織りなす、グラデーションがかかった琥珀色の輝きや、氷とグラスが奏でる音も美味しさを引き立ててくれます。氷にこだわるとまた一段と愉しむ方法も広がりますし、カット装飾が入っている重量感のあるクリスタル・グラスは雰囲気を盛り上げ、贅沢な気分を味わいたい時にはピッタリです。読書や音楽を聴く時など、くつろぎの時間を愉しむ時にもおすすめの飲み方です。

水割り

氷をたっぷりグラスに入れ、ウイスキーを注ぎます。ウイスキーがしっかり冷えてから水をウイスキーの2〜3倍程度加えます。食事の時に料理と合わせやすい飲み方なので、お好みの濃さでお愉しみください。お刺身や煮物などの繊細な味わいの和食に合う飲み方です。グラスは自由に、食事のシーンにあったものをお選びください。
氷は冷やすだけにするか、或いはウイスキーを冷やしておいて、飲む際は氷を入れないスタイルも愉しみ方のひとつです。

トゥワイスアップ

ウイスキー本来の香味をじっくり味わいたい方におすすめのスタイル。水割りのひとつですが、氷は入れず、ウイスキーをグラスに注ぎ、同量の水を加えます。ウイスキーに溶け込んでいる複雑で繊細な香りと味わいを存分に愉しめます。グラスはテイスティンググラスやワイングラスなど、香りをより愉しめる小振りのチューリップ型のグラスがおすすめ。

お湯割り

ウイスキーをグラスに注ぎ、ウイスキーの2〜3倍のお湯を加えます。グラスから立ち上る暖かい湯気とともに豊かに香り立つウイスキーの味わいは格別です。お湯割りならではの味わいは、ウイスキーの新しい魅力を見出せるかもしれません。アクセントにシナモンスティックを入れて、ほんの少しハチミツを加えると、ホッと心も温まる飲み物になります。蓋つきのお湯割り専用グラスもありますが、容器にこだわらずマグカップでカジュアルに愉しめ、寒い冬だけでなく、山や川辺などアウトドアにもおすすめです。

ソーダ割り

グラスに氷を一杯に入れて冷やし、そこに冷えたウイスキーを注ぎソーダを加えます。爽快感を愉しむスタイルでレモンやオレンジピール、ミントなどで香り付けすると、より爽快感が引き立ち、愉しみ方が広がります。使用する炭酸ソーダの種類によっても味わいが変わりますが、グラスを取っ手付きのジョッキからうすはりグラスタンブラーにするだけで味わいや印象が大きく変わります。

以上、一般的な割り方を中心に愉しみ方とそのアレンジ方法をご紹介しましたが、それぞれのウイスキーならではの特徴を生かした割り方と愉しみ方があります。いろいろと試してみると、新しい発見とともに好きな飲み方が見つかるかもしれません。

水を足す、氷を入れる、温める、はたまたそのままで、色々な香りや味わいを愉しめるウイスキー。さらにグラス選びにちょっとこだわることで、それぞれのウイスキーが持つ多彩な魅力を発見することができます。グラスは、ウイスキーのそれぞれの特長をさらに魅力的にしてくれるパートナーのようなものなのです。

1/4の角氷を一片。今私がすすめる愉しみ方

お気に入りのコニャックグラスにウイスキーを注ぎ、通常の角氷を4分の1位の大きさに砕いた1片をひとつ落とす。これが私の最近のウイスキーの愉しみ方です。

小さな氷が少しずつとけてゆくと、ウイスキーの香味がゆっくり解き放たれ、香りや味わいの変化を愉しむことができます。通常ウイスキーに水を加えると、希釈熱が発生し、液温が3〜4℃上昇してしまいます。ウイスキーに水を加える代わりに、小さい氷を加えることで、希釈熱による温度上昇を抑え、ウイスキーの香味変化を愉しむことができるのです。

この愉しみ方は、フランスでストレートにスプーン1杯・2杯と水を注いで花開かせる飲み方を披露した際に、香りを愉しめる別の方法として教えてもらいました。とても理にかなっていて、味わいの変化を愉しめる素敵な飲み方なので気に入っています。

皆さんにもきっと、お好みの飲み方があると思いますが、ウイスキーは、アルコール度数を自由に変えてさまざまざな愉しみ方のできるお酒です。ウイスキーの飲み方に「これ!」という決まりはありませんので、ご自身の気分やシチュエーションで気軽にグラスを選んだり、割り方やデコレーションのアレンジを加えたりして、ウイスキーの新たな愉しみ方を発見してみて下さい。

さて、次回のテーマはお待ちかねの「フードペアリング」です。最近流行のあのペアリングからあっと驚くペアリングまで、幅広くお届けします。

お楽しみに。